咎狗の血

□アキラが居るから俺は…
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…ッ!!

急激に眠りから覚めた。
一瞬で変わった現実と夢の変化についていけず、脳髄の中は暫くの間真っ白だ。
ただ荒い呼吸だけを繰り返す。

「ハァ…っ、は…あ……」

覚醒が急過ぎて夢の内容は覚えていない。
筈なのにハッキリと頭の中に残っている。

多分また、同じ夢だから。

朝にはまだ遠い時間に目が覚めるのは何時もあの夢だ。
自分が犯した罪咎。
その行為が始終夢の中で蘇る。
幾らラインを服用して正面な思考で無かったとしても、紛れもなく自分の手で染めた殺人だった。
その事実が、今も重くケイスケに伸し掛かっている。

何度謝っても許される事じゃないけれど、謝らずには居られない。
罪の意識に支配されてとても眠る気になんてなれないから、上半身を起こしたままただ視界を下げて項垂れていた。
暗い室内。
顔を降ろして目を閉じれば、真っ黒だった視界がますます黒くなった気がした。

ごめん、ごめんごめんごめん―…

死んでいった人達の怨みを思えば苦しくて仕方なくて、止めようとしても目頭が熱くなって涙が込み上げる。

ごめん…
本当に
取り返しのつかない事、を…
過ぎた時間を戻そうとしても無理だ。
死んだ命を蘇らせる事も叶わない。
こんな気持ちが死ぬまで続くなら、いっそ一緒に地獄にでも引き摺り降ろしてくれた方が楽かも知れない……
ずっと奥深く、もう二度と這い上がれないような、地底よりも更に奥底に


沈んでいく

沈んで いきたい


「ケイスケ」


暗い地底の奥底に居たかと思えば、遥か頭上から声が聞こえたような気がした。
その声に引っ張られるように顔を上げて、声の主を見る。
好きで好きで堪らないアキラの顔…
少しでも油断すれば顔が崩れて涙が溢れそうだから、必死に笑みの表情を繕っていた。
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