テニスの王子様
□おはよう
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寝起きの悪いリョーガにとって、眠りから覚めて布団を出る事は苦痛に近い。
夢から覚めた頭はしっかりと朝を迎えた事を理解しているけど、眠気の取れない身体は重たくて仕方なくて、随分寝たと云うのにまだ起き上がる気にはなれなかった。
まだねみぃ…もっと寝ててぇな…
そんな思考に抗う事なく寝返りを打って、うつ伏せになると枕を抱えるように胸元へ引き寄せながらもう1度目を閉じた。
夢の中に落ちるのは近い。
周りの音なんて全く耳に入らなくなって、殆ど全ての意識を眠りにもっていかれそうな。
そんな時に、頭上から声が聞こえたから一気に現実に引き戻されてしまった。
「おはよう」
瞬間、パチッと瞬時に瞼が開いて声のした方へ顔を向けた。
その先にいたのは手塚国光。昨日は手塚の家に泊まって此処は手塚の部屋なのだから当然だ。
「…はよ」
気だるげに上半身を起こして視界が冴えないまま相手を見つめていた。
さっきまで眠たくて仕方なかったのに、急ピッチで眠りから覚めてしまったから考えが追い付かなくて、訳の分からないままぽりぽりと頭を掻く。
コイツの声は低いテノールにしてはよく通るから声を掛けられて起きない事もないが、今までの経験上どれだけ大声で怒鳴りながら起こされても此処までスッキリと起きれる事なんて無かった。
其れが今日に限って何なんだこの目覚めの良さは…
声の音量で無ければこの男の発した言葉の内容…
おはよう、おはようおはよう…
「どうした?」
「や、それ…そのおはようってヤツ云われたの久々だなぁと思ってよ」
「そうなのか?起きて1番に会った時の挨拶だから大事だぞ」
よく考えてみれば目覚めの挨拶を最後に交わした日なんて覚えていない。
朝1番に見た相手から貰った言葉を噛み締めて、朝1番に起きて傍に誰かが居て呉れる有り難さを実感して、今までと違った朝に此れからの生活が楽しみだな、と…自然に口元が綻んで笑みを抑える事が出来なかった。
「そーだな、挨拶も結構良いモンだ」