テニスの王子様

□アンタのお陰で過ごせる新しい夜
1ページ/2ページ

目を覚ますと嗅ぎなれない匂い。知らない天井。
訳の分からないまま暗闇の中で目を凝らしていた。

(…何でこんなトコに居んだァ…?)

ぼんやりと目前を眺めて頭を働かせようとしてもどうにも重くて鈍い…
薄暗い部屋…
綺麗な天井…
今迄何度か行き渡った家では何処か住み慣れた染みが窺えた筈なのに、
今見ている場所は暗闇でも分かる位白くキレイだ…
匂いも清潔感の窺える香りも何処か安心すんなァ…

ってこんな事考えてる場合じゃねーよっ、船の上で試合をして俺は…

……。

ッ!!…あの後どーしたんだよ!?

暫く考えていると思考が蘇って焦心し、同時に寝ていたベッドから飛び起きた。

あの後の記憶がない。
困惑した意識のままベッドの下を見ると、本来このベッドを使っているだろう部屋の主が、床に布団を敷いて眠っていた。
寝ていたのは手塚国光。
ココはやけにジジむさい青学ぶちょう様の家だ。
(一体何時の間に寝てたんだ…しかも何でこいつの家に……)
薄い生地のカーテン越しに見ると外は既に真っ暗で大体真夜中だと想定出来る。
電気の消された部屋は真っ暗に近い。
当の手塚は熟睡していて、起き上がった自分に気付く様子は全くない。
しんと静まりかえっている部屋。
閑散としている。

改めてソレを実感すると急に身体が震えだしてその震えを止めようと自分の身体をかき抱いた。
(くそっ…)
小刻みに震える身体は自分ではどうにも出来なくて、その状態のまま前のめりに倒れてうつ伏せにベッドに沈んだ。
抗えない身体の変化に仕様がなく布団に額を擦り付ける位しか出来ない。
締め付けられたような胸の痛みに呼吸が乱れる。

1人の夜はどうも駄目だ。
たとえ同じ部屋に誰かがいたとしても、人肌の温もりを実際に感じないと落ち着く事が出来ない。
発作みたいに身体が痙攣して眠れねーんだ。
帰る家もなくふらふら渡り歩いてきた日常の寂しさを隠しながら生きていたら、何時の間にかこういう体質になっていた。
昨日まで側にいた相手は捕まってしまってもう居ない。
だけど代わりに手塚が目の前にいる。
どうしてこうなったのかは知らねぇけど、きちんとパジャマを着せて貰ってるからには、相手の同意の上で邪魔してる事になるんだろうな。
だから後から文句なんて受付ねぇからな…。
うつ伏せのまま、顔だけずらして手塚の方へ向けていた。
迷ったのは一瞬で、すぐさま身体を起こすとそろりと布団から出てベッドを降りた。
向かうのはもちろん手塚の布団の中。
ガクガクと震える身体は歩くだけでも精一杯だ。
ベッドのすぐ隣で近かったのを幸いに、布団の端を掴んで捲ると遠慮なく其の中に潜り込んだ。
布団の中は手塚の体温で暖かい。
背中から寄り添って腰に腕を回してきつく腕に力を込めた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ