嘘吐き

□・
1ページ/1ページ




「バレンタインか」

カレンダーを見て
ふと気付いた

今日はバレンタインだ

と同時に焦る

「チョコ作ってない!」

どうしよう

静雄にあげたいなあ


と、いうわけで!



携帯を開くと
静雄に電話をかけた

「もしもし」

「…名無し様か?」

「うん!」

「なんだ?」

「あ、えーと
あのね
今日ちょっと静雄の所
行けないかも知れないの」

「…そうか」

「うん
ごめんね?」

「ああ」

「じゃあね
ばいばい」

「おう」



電話を終えると
携帯を閉じ


「よーし
買い物いくぞー」

服を着替え
髪を梳かすと
バックを持って

玄関を出て
鍵を掛け


「えーっと材料は」 
 









































----------------


「さてと
じゃあ作りますか!」

と意気込んだ後に

鼻歌を歌い
着々と作っていった

「…あれ
パレットナイフがない」

さっきまであったよね?
なんで?

「あー
これパレットナイフっつうのか」

「あ、それそれ
ちょっと貸してもらっていい?」

「おう」

…あれ?

おかしいな

ん?


パレットナイフを片手に
握り締めたまま
ぎぎぎぎ、と
後ろを向いた

「し、静雄」

汗がだらだらと
流れる

「よ
いねえと思ったら
いるしよ
なんかすげー旨そうな匂いするし」

「ね、ねえ静雄
いつからいたの?」

「あーお前が
鼻歌歌い始めた時位だな」

めっちゃ最初
なんで気付かなかったの私!

「静雄
これあげるから
今日は帰っててくれる?」

そっと差し出したのは
チョコシェイク

「お
ありがとな」

きゅいきゅいと
それを飲みながら
すたすたと歩いていった

数秒後に
ばたん、と音が
したから多分帰った

「ばれちゃったかな」

ふう、と溜息をつくと
また作り始めた

ココアパウダーを
上面にかけると
ミントとフランボワーズで
飾りつけ


「できたー!」

これだけの作業で
15分以上かかってしまった

私が静雄に作ったのは
チョコレートプリン


これを静雄にもっていかなければ

コートを羽織り
プリンを紙袋に入れると

玄関を出て
走り

「…っは」

息を乱し
肩を上下に揺らしながら
インターフォンを押した

すると
10秒後くらいに
玄関を開けてくれた

「…名無し様?
どうしたんだ?
とりあえず入れ」

そういわれると
お邪魔します、といい
靴をそろえると
ふう、と息を整えて

「んで
どうしたんだよ?」

こと、と
お茶を出される

優しいな

「あー
えー、と」

いざ渡すとなると
恥ずかしくなるものだ

ばっと紙袋を
静雄に差し出すと
きょとんとしていた

「貰っていいのか?」

こくん、と一回頷く

静雄は何の日か
わからなかったらしく
携帯を開いてカレンダーに
目を落としていた

「バレンタインか」

ありがとな
と少し笑った彼の
顔は少し赤かった

「食べて、いいか?」

「うん!」

私はちゃんと
プラスチックのスプーンも
入れた

…百均だけど

「…プリン」

そう言った彼の目は
いつもより優しくて
何より輝いていた

スプーンで掬って
ぱく、と口に入れる静雄

…不味かったらどうしよう

「うまい」

ぽつり、と一言だけ

「本当?」

「ああ」

髪に指を絡める
彼の手は優しかった

「よかった!」

「ほら」

ずいっと口の前に
差し出されるスプーン

「へ?」

「だから、ほら」

所謂あーんですか
さいですか

特に断る理由は
ないのでぱくっと
口に入れた

…あ、美味しい

自分で言うのもなんだけど…

顔を綻ばせると
彼はまた満足そうに
プリンを頬張っていた


「あ」

「なに?」

「そういえばよ」





























「間接キス、だな」




























Happy Valentine!


(名無し様
愛してる)

(!
…私も愛してる!)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ