原作沿い

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乱射の音。
怖い怖い怖い怖い。
また乱射の音が聞こえる。


【来てくれた王子様】


皆の逃げる足音が。
殺されていく人達の断末魔が。
怯える人達の悲鳴が。
私の耳を襲ってくる。

「西君…西君…」

カタカタと手が震える。
今すぐスーツを手に取れば良い。
ただそれだけなのに、そこまで考える事ができなかった。
怯えると、人は何も考えられなくなるんだろうか。

「死にたく…ない…死にたくないよ…。」

震える手でギュッと携帯を握りしめる。
北条さんの声を聞いて、少しだけ安心した。
待っていれば、北条さんが来てくれる。
…西君は?
来るわけないよ…ね…だって、連絡してないもん。

「ふっ…ふぅ…」

息が荒くなる。
西君に連絡したい。
西君…そうだ、私は今さっき西君に助けを求めるために携帯を出したんじゃないか。

「西君…出てくれるかな…。」

私は西君に電話をかける。
だけど…

「…出て…くれない…。」

いつもならすぐに出てくれる西君が、今日は出てくれなかった。
用事があるかもしれない。
だけど、一気に私は不安になって…

「怖い…怖い…」

ボロボロと涙を零した。
そうだ、ここから早く離れてしまえば良いんだ。
そう気づいた私は立ち上がる。
その時、

「何でその場から離れようとするんだお前は。」

と腕を掴まれた。
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