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□変
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「彼シャツってどう?」
「どうって……エロいけど。」
「じゃあ、メイド服は?」
「名無しさんだったら似合うし、可愛いだろうなあ。」
「じゃあじゃあ、水着は?」
「そりゃー、誰にも見せたくないなあ。」
「かーっ、のろけてくれるねぇ!」

なんて男同士の会話を横でされてるんですけども、そのうちの片方は私の彼でして。

「勝手に人で妄想しないでよう!」
「え、まだ着たことないの?!」

そうです、そんなことすらない私達になんてことを聞くんだろう。

「彼シャツぐらいあるだろ?なあ木吉?」
「まだないぞ。」

お前ら一年付き合ってるよな?と驚いた顔で言われるが、私ですらもこればかりは謎。キス止まりで大切にされているのか、口から出任せなこと言っときながらも興味がなくなってしまったのか。



なんてことがあったから、そのせいで私は彼シャツするはめになったわけで。
いつも通り、一人暮らしの彼の家でお泊まりをする。お風呂に入って暫くして一緒にベッドに入って寝る。それだけ。

それなのに今日は違う。お風呂から出たら彼のTシャツしか置かれてない。つまりそれを着ろと。仕方なくそれを着てみるが、膝上辺りまで丈がある。


「鉄平……パジャマどこ。」
「お、出たか。やっぱり思ってた通りだ、エロいなー。」

感心しているこの男、私を横目に喋りながらとっとと自分もお風呂に入って行ってしまったのだ。所謂放置プレイだろうか。

お風呂から出てきて、彼は普通にいつもの格好で出てくる。

「彼シャツっていいな!」
「恥ずかしいから…!ほんと、どこにやったの?」
「ナイショ。」

ジリジリと迫ってきて、この一年間はなんだったのだろう?と焦り始めた。

「えっえっなに、」
「……なにって、ナニ?」
「ばか!いきなりすぎるって!!!」
「いいかなぁって、な。」
「なんで今の今まで、手出してこなかったの?魅力がないからとか好きじゃないとか、」
「それだったらとっくに別れてるだろ?」

じゃなんで?と問いただせば

「シなくても人を愛せるだろう?」

なんて言い出すから意味が分からない。

「……えっと?」
「だけど、今はムラッときたから。」
「う、うん?」


だからセックスしようぜ?
その一言で一気に押し倒されて、私を一生懸命考えているのに今までにないくらい深いキスで考えさせてはくれなかった。
でもこれだけは言える。

私の彼は変人。





「(あっさりやってしまった…。)」
「なあ、次はメイド服着てみないか?」
「嫌。」
「んー、もっかいシたくなった。」
「急?!」

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