過去拍手

□不良×怖がり
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いつも遠目で見ていた後輩がいた。
無愛想で無口。そのうえ喧嘩っ早くて生傷が絶えない。
校内ではもちろん、他校生とも揉め事を起こし、何度も警察の世話になっていると聞く。
出来るなら一生関わりたくない人種だった。
あの日までは。




平野涼名(ひらのりょうな)は、自分で言うのもなんだが、女みたいな顔をしていて、わりとモテる。同性である男限定だが。
ただ、この顔に生まれていいことがあったと聞かれれば、意外とそうでもない。
小さい頃は変なおじさんに誘拐されかけたし、電車に乗れば必ず痴漢にあう。中学の時に告白した女子から、自分よりかわいい彼氏なんて嫌!とフラれた。
そして今、涼名は他校の男子に囲まれていた。
「可愛いね君」
「マジタイプだし」
「あ、あの……離してくださ………」
がっしりと捕まれた手が怖くて、涼名は涙目で離してくれるよう訴える。
しかし、彼らはそんな涼名の訴えなど聞こえておらず、少しずつ人気のない方へと追い込まれていった。
「あの、俺男なんで………」
そういって立ち去ろうとしたが、一人が壁に手をつき、涼名の行く手を遮った。
「ほんとに男?」
一人がそういえば、他のものたちも口々に言う。
「本当に男か、確認しようか」
そのとたん、涼名のネクタイに手がかかった。
「っ!」
涼名はぎゅっと目を閉じ、体をこわばらせた。
たぶん、この先はレイプ。
逃げないと。
そう思うのに、怖くて動けなかった。
しかし、どれだけ待っても次の行為に進まない。
「ぐはっ!」
「うわ!!」
突然の悲鳴に、涼名は恐る恐る目を開けた。
鼻血を吹きながら倒れる人なんて初めて見た。
そんなことを呑気に考えていたら、あっという間に他校生数名は地面に沈んだ。
「大丈夫か?」
そう問われたが、涼名は恐怖で声がでなかった。
「おい」
手を伸ばされ、涼名はびくっと肩を揺らした。
ぴたりと手が止まり、そのまま引っ込む。
「ここはトラビスの縄張りだからあんまり近付くな」
それだけ言うと彼は去った。
それが涼名と、不良後輩・杉村佑真との出会いだった。
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