過去拍手

□俺様×健気
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俺のこと好き?


それとも嫌い?


俺は、愛してる。





好きと嫌いを天秤(はかり)にかけて。





春日野采都(かすがのあやと)は、校舎裏に呼び出されて、嫌々やって来た。
これからなされることが分かっているからだ。


そして、予感は的中する。


「好きだ。俺と付き合え」

「は……?」

突然の告白に、采都は目を丸くさせた。
何をいっているんだ、そう言いたげに采都は目の前の男を見た。


彼は確か、学内でもトップの家柄と学力を誇り、そして学校始まって以来の問題児。
名を呉羽偉流(くれはたける)。
ここ、私立呉羽学園理事長の孫で、高等部校長の息子。


「俺、男だけど」
と、念のために言ってみる。


すると、偉流は眉を寄せて采都を見た。


「知ってる。ここ男子校だし」


采都は困った。
確かに采都の顔は男と言うよりは女よりで、体格もあまりいい方ではない。食が細いため華奢だ。

何度か、偉流みたいに告白されたことはある。


この呉羽学園は、財界や貴族の子息のための学校だ。
通う生徒たちは、それなりの身分のものばかりである。
采都の春日野家も、侯爵の位を持つ高貴な家柄だ。
相手もそれを知って采都に言い寄り、家との繋がりを欲していた。
皆、采都のことを本気で好いているのではなく、彼の爵位に好意を抱いているにすぎない。

だから、采都はすべて断ってきた。侯爵の地位が、それを許してきた。

この学園で、侯爵より上の地位は公爵のみ。そんな地位を持つのは、ごく僅かだ。
そう言った高貴なものには、大概姫がいる。
姫とは、貴族の子息にだけ許された特権のようなもの。

上位のものが下位の者に告白したとき、下位の者はこれを断らず受け入れ、上位の者の心身のケアを行うこと。
これは校則にも記載されていたりする。


目の前に立つ男は、この学園で最高位の公爵の地位を持っている。
つまり校則上、采都は偉流の告白を断れない。


「断れないよな?春日野侯爵」

にやりと笑う偉流に、采都は小さく溜め息を吐いた。
「………慎んで、お受けします」
采都は仕方なく、この男のものになることにした。
これは家のため。


こんなやつ、好きじゃない。


好きじゃない。


本当に?


………実は、別に嫌いじゃない。


じゃあ、好き?


分からない……。





「好き?」


「それとも嫌い?」


「愛してるよ、采都」
 
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