過去拍手

□海軍×海賊
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「あれが海賊の船長か?何だ、まだ子供じゃねーか」
男は牢で寝ている少年を見て、そう言った。
「確かに。捕らえた他の船員がそう申しております。名はレイ。現在、五つの海域で名を轟かせている海賊です」
「ふぅん。あんな子供が、ね」
「はい。ただいま拷問にかける準備をしています」
「出来しだい呼べ。俺がやる」
「はっ!」
そんな会話が近くでされているのに、レイはすやすやと寝ていた。肝が据わっているのか、ただのバカなのか。果たしてどちらだろう。
我知らずにやつく顔に、部下の男はぎょっとなる。何せ凶悪な笑みを浮かべていたのだ。無理もない。
彼は、海軍のなかでも怖れられている軍人。大将、ジン・ハービと言えば知らない海賊はいないくらいだ。
「ここからだせー!!」
「船長に手を出したら許さないぞ!」
すやすや寝てるレイとは反対に、彼の船員は牢屋の中で叫ぶわ暴れるわで、喧しかった。
「ふん。しつけのなっていない犬だな」
ジンが腰に下げていた剣の柄に手を添えかけたとき、レイがむくりと起き上がった。
「うるさい。寝られないだろ」
レイの、まだ幼さの残る声が牢屋全体に響く。その一瞬で、騒いでいた海賊たちは黙り込んだ。
「ほぅ?黙らせるとは、幼くても船長、か………」
ジンはレイの牢へと目を向けた。
「幼いは余計だ。ジン・ハービ」
「船長」
「ですが………」
なおもいい募ろうとする船員たちに、レイは片手で制する。
「俺のことを知っていたか」
「もちろん。噂は良く耳にするよ」
「そうか。ならば話しは早い。貴様らが海軍から奪った金品をどこへ隠した?船にはなかったぞ」
「ストップ!」
「あ?」
レイのストップ宣言に、ジンは眉を寄せる。
「俺を拷問するんだろ?聞き出してみな」
寝ていたと思っていたが、どうやら聞いていたようだ。
レイは妖艶に微笑み、ジンをまっすぐ見据えた。
「なるほど。では招待しようか。鍵を開けろ」
ジンはフッと笑うと、部下に解錠させ、レイを出した。
「船長!」
「レイ!!」
「黙れ。おい、ジン。俺がてめぇの拷問に耐えたらこいつら全員を釈放しろ」
「な!そんなこと出来るわけ……!」
「良いぜ。俺の権限で許可しよう」
「!?ハービ大将!!?」
そのようなことをすれば、大将であっても処分されてしまう。
「喧しいな。こいつを捕まえたのは俺だ。こいつをどうするかは俺が決める」
ギロリと睨まれ、部下は押し黙る。
「レイ」
今までとは声質も威厳も全く違う声音が部屋に響いた。
「アッシュ……。悪いな。あとは任せたよ」
「レイ!」
レイは誰の声にも振り返らなかった。
ジンはレイを連れて牢屋を後にする。
後ろでは、レイを心配する声だけが響いた。
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