過去拍手

□オメガバースV
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 Ωの宿命たる発情期が、どれだけ嫌がっても必ずやってきて、俺を襲う。


 1ヶ月に1度、1週間ほどではあるが、俺は動物のように雄の種を欲しがる体になる。


 普段は薬で抑えているのだが、体調によっては薬が効き難い時がある。


 今回は薬の効きが悪いようで、俺は朝からベッドに沈んでいた。


 この時ばかりは息子の面倒も見られなくて、俺はただの役立たずになる。


 天使はご機嫌斜めのようで、朝から盛大に泣いているのが聞こえたけど、今の俺では面倒見れないからな。


 遥麻、マジでごめん…。元気になったら遊んでやるからな。


 朝から寝ていても、体は楽にならなねぇ。だるい…。


 まだ1日目なのにこのしんどさはなんだよ。くそっ…。


 だからΩなんて嫌なんだ。何でΩなんて存在するんだよ。普通は進化の過程で劣等種なんて最初に淘汰されるだろ。


 あ、駄目だ。ネガティブ思考になる。


 頭いてぇ。たぶん熱もあるんだろうな。


 一体いま何時だ?遮光カーテン閉まってるし、とにかく暗い。


 スマホスマホ。……げっ、9時過ぎてる。


 あー、だったら注射打っても問題ないか。どうするかな。


「綾、大丈夫か?辛いなら挿れようか?」


 ガチャリと開いた扉から、奴が顔を覗かせてきた。


 何で今来るかな?


 くそ、体の震えが止まらねぇ。


 俺の体が震えるのは、雌として雄であるコイツを欲しいと思う衝動を抑えているからだ。


 薬が効かなくて、こいつを見るとどうしても性欲が抑えられない。


 コイツにだけは頼りたくない。何か、俺の地に近い、低いプライドが邪魔をする。


 奴はそんなことを気にすることもなく、俺の側にきて膝をついた。


「あまり我慢すると子供ができなくなるぞ」


 いや、遥麻がすでにいるから子供なんていらねーだろ。跡継ぎは産んだんだから俺の義務は果たしただろ。


「綾、頼むから俺を頼ってくれ。一人で苦しむな」


 そう懇願しながら俺の手を握ってくる。


 良く見ると、イケメンフェイスの鼻に洗濯バサミを挟んでいたので、なんか腹が立ってアホな旦那の頭を叩いてやった。


 何で洗濯バサミなんか鼻に挟んでんだよ。そんなんでヒートが防げたら医者も薬も研究者もいらねぇよ。


 ホント残念なやつだな。


 何か、意地を張るのも馬鹿らしくなってくる。


「……おい」


「ん?どうした?」


「………薬の効き悪いから、今日だけ挿れろ」


 俺がそう言うと、奴は今にも泣きそうな顔で笑った。


「ありがとう、アヤちゃん」


 アヤちゃん言うな。


 言葉にする気力もなくて心の中で悪態つく。


 奴は俺のきていた布団を捲り、もそもそと中に入ってきた。


 薬が効かない時の特効薬がコイツの精子なんて笑えねぇ。


「ぁ、ん…」


「綾、綾…愛してる」


「ふ、ぁ……かず…や……!」


 俺が苦しい時、いつもコイツは誰よりも先に察して、俺を苦しみから解放してくれる。


 だから俺は、劣等種のΩでも生きていける。


 コイツと遥麻がいれば、あとは何も望まない。


「ん、ん。か…ずや…」


「辛いか?今楽にしてやるからな」


「……き」


 奴が目を丸くするのがちらっと見えた。すぐにそれは破顔し、俺にキスの雨を降らせる。


「俺もだよ、綾」


 たまには『好き』なんて口走ってしまう、そんな夜があっても良いかもな。






後書き

オメガバース第3弾をお送りしました。
遅くなってしまい申し訳ありません!
今回は綾の発情期の話でした。
いつもはツンな綾が少しだけデレた貴重な話になります(笑)
ホントは旦那の事好きだけど、素直になれないアヤちゃんです。
安定の短さに、もう開き直ってますw
次はもっと短かったりします…(;´∀`) 
頑張って増やしたのですが、もともとがすごく短かったため無理でした(ノω<`)
次はあまり間隔を開けずに更新します!………たぶん(ボソッ)

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