過去拍手
□元魔王×元勇者U
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千年前戦った勇者と魔王が転生して高校の同級生になった話U
「いやぁ、まさかこんなところで再会するなんてな〜」
「こっちの台詞だ」
円木悠士と蕪木真生は、二人揃って屋上にいた。
フェンスに背を預けて並んで座る。
二人には、いわゆる前世の記憶がある。
前世での悠士は勇者。
真生は魔王。
互いに命を懸けて戦った間柄だが、今の二人に前世のような力はない。
前世の記憶を持っていること以外は、ごく普通の高校生である。
「何の冗談だろうな。俺が人間なんて」
ぼやく真生に、悠士は苦笑を浮かべた。
「さぁな。ま、せっかく転生したんだから今を楽しもうぜ」
「そうだな。────悠士」
真生の声がいきなり甘いものに変わる。
その声に、悠士はわずかに頬を赤らめた。
「あの時は、時代が許さなかったが、今は違う」
隣にいた悠士を引き寄せた真生は、真剣な眼差しで悠士を見つめる。
「真生……」
千年前。
二人が敵として戦うことになったあの時代。
二人は互いに惹かれ合っていた。
しかし、周りがそれを許さず、二人は仕方なく戦った。
ぐっと近付く距離に、悠士は目を閉じる。
そうすれば、真生の顔が近づき、そっと唇に重なる。
「ん…」
「お前にこうして触れられる日が来るなんてな」
「真生……」
熱い眼差しは、千年前と変わらない。
「もう俺たちの邪魔をする奴なんて……」
いない、そう続けようとしたのだが、真生の言葉は続かなかった。
バアァァァン!!
激しい音と共に数人の生徒が入ってきた。
「ふざけんなぁぁあ!!!」
「颯真(そうま)、やめろって」
「そうだよ!二人の邪魔しちゃだめだって!」
「うるせぇ!!俺たちの勇者が魔王の毒牙にかかろうとしてるってときに、黙ってられるか!!!」
「……そう言えばいたな、俺たちの邪魔をする奴が」
現代に転生したのは、勇者と魔王だけではなかった。
なぜか、共に戦った仲間たち数人も記憶を持ったまま転生していた。
それが発覚したのは入学式が終わってからのことだった。
悠士と真生が甘い雰囲気を味わっていると言うのに、空気も読まず乗り込んできたのは前世で勇者のパーティーにいた人物。
僧侶として仲間たちの回復など、主に後方支援を得意としていた。
現代の名を住良木颯真(すめらぎそうま)。
前世での彼は男とは思えないほどきれいな青年だった。
今の彼も、前世を彷彿させるほど愛らしい顔立ちをしている。
しかし、今はその愛らしい顔が般若のような形相となり、真生を睨み付けていた。
「颯真、俺は別に毒牙になんかかかってない」
溜め息をつきつつ、颯真にそう告げる。
「あなたは騙されてるんです!こんのくそ魔王!悠士から離れろおぉぉ!!」
「うるせぇな」
叫ぶ颯真を横に、真生は耳を塞ぎながら明後日の方向を見る。
「千年前なら今すぐ魔法で吹っ飛ばしてやるのに!!」
「はっ!ヘボ僧侶のクズ魔法なんかで俺が殺られるわけねぇだろ」
「何だと!?」
今にも噛み付かんばかりの颯真に、他の仲間たちが口を挟む。
「真生、煽んなよ」
「ダメだよ、二人とも。今はただの人間なんだから」
二人の間に入るのは勇者側の賢者と、魔王側の闇魔法使いである。
賢者の名が枕木顕司(まくらぎけんじ)、闇魔法使いの名が倉木美夜(くらきみや)。
ちなみにこの二人、産まれたときから一緒にいる幼馴染みである。
「ほら、颯真。行くよ。せっかくの二人の時間を邪魔しないの!」
ピシャリと叱る美夜に、「魔王の手先の言うことなんか聞けるか!!」と叫びながらも、颯真は彼らにずるずると引きずられていく。
「悪かったな、邪魔して。んじゃあ、まぁごゆっくり?」
最後にそう告げたのは魔王の側近だった青年。
名を久留木聡季(くるきそうき)。
「やっと静かになったな」
「そうだな」
せっかくの甘い雰囲気も、彼らの乱入ですっかり消えてしまった。
「クラスに戻るか」
「もう戻るのか?」
立ち上がる真生に、悠士は不満げに彼を見上げる。
「ここだとゆっくりお前に触れないから、学校終わったら俺のところに来いよ」
「!……良いのか?」
「どうせ一人だからな」
「よし!戻るか。放課後が楽しみ〜」
悠士があまりにも楽しげに戻ってきたため、またしても颯真が真生に怒ったのは言うまでもない。
後書き
元勇者と元魔王の転生話し、第二弾になります!
いかがでしたか?
私としては書いてて楽しかったです。
mainの話が進まないので息抜き程度に書いてたんですが、思いの外ハマってしまいまして(^_^;)
この次は結ばれる話しをいれたい。
まだキスまでの清い関係です!(笑)
それでは拍手ありがとうございました!