桜花乱舞

□第弐拾捌話〜滅びの歌〜
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あれからどれ程の時が経ったのだろうか。
私と千鶴が鬼の一族だと仲間に知らされてから半年以上。
兄上や平助ともあれ以来…再開することはなかった。


翡翠「へっくし…」


くしゃみをして鼻を啜る。
庭を見てみれば千鶴は落ち葉を掃いている。
また一つ、季節は廻った。


総「翡翠、風邪引いちゃうよ?」


眉間に皺を寄せて部屋に入ってくる総司。
正直なところ…彼に心配をされたくはなかった。
死病を患っているのにも関わらず――。



翡翠「…なんだ?やけに今日は調子が良いのだな」



冬に入ってからというもの自室で塞ぎこむことが多かった総司。
肩に置かれている手はいつもの彼の体温だった。



総「…今日はね…凄く調子がいいんだ…ねぇ…翡翠お願いがあるんだ」



隣に腰をかけた総司は私の頭を両手で包み額を合わせた。
目の前に見える若草色の瞳は悪戯っ子のように目を細めた。



翡翠「…そっ…総司…近いぞ」



総「んー…いい匂い…ねぇ…抱きしめていい?」



腰に手が回ったのに気が付き為すすべもなく彼の胸に抱かれる。
総司の胸壁に手を当ててみれば生きていることを主張していた。
何時もより…鼓動が早い。



総「…翡翠、翡翠大好き…大好きだよ」



翡翠「嗚呼…私もだ」



鼻先と鼻先が触れ合う。冷たい空気を他所に感じる確かな熱。
誰もこの空気を邪魔する者はいない…近づいてくる総司の顔。
私は静かに目を閉じた。


総「んっ…」


柔らかな唇が触れた瞬間、白く漏れた息は寒空へ消える。
次から次へと降り注ぐ接吻。
今迄に無いくらい…優しく甘いもので背筋に何とも言えない痺れが走る。



翡翠「はっ…総司っ…」



接吻の合間、彼の名前を呼び視線を絡めた。
総司は吃驚した顔をしクスッと口元に笑みを浮かべる。
考えを見透かされていると思うと悔しくてたまらずついつい視線を逸らしてしまった。



総「なぁに?翡翠…何か僕に…して欲しいことあるんじゃないの?」



親指で上唇を撫でられ軽く噛んだ。
この空気は…完全に遊んでいる。



翡翠「――して」



総「ん?なぁに…?聞こえないなぁ」



次は下唇を撫で甘い刺激が走りに目に溜まっていた涙が頬を伝った。
それを拭うと総司は涙を舐め、再び覗き込む。



総「翡翠の我が儘ならたくさん聞いてあげる…ねぇ、もう一回言って?」



翡翠「もっと…接吻して…総司に触れて…いたいっ」



総「よくできました」



腕を強く引っ張られ貪るような口づけをされる。
総司の舌が私の口腔を犯す。舌がクチュリと絡め取られてしまえばされるがまま。
ざらついた舌が口蓋を舐め上げる。



翡翠「ふぬぁっんうぅふっ…ぁ」


総「はっ…ん…。」


艶めかしい声を出して行為を続ける総司。
行為に夢中で総司の後ろで見ている人影に気付かなかった。



土「…おい、久々の逢瀬だからって…人払いする身にもなれ…」



彼は総司の背後に立って恐ろしい形相で私たちを見ていた。
気配に気づいた総司は屈託のない笑顔で返答をする。



総「人払いありがとうございます土方さん」



土「ったく…手前らは全然変わらねえな…」



土方さんに先程までの行為を視られていたことになる。
思い出すだけで我ながら恥ずかしい台詞を言った。



総「あれ…?翡翠顔真っ赤」


翡翠「ほっ…放って置いてくれっ」



私は総司の胸元に顔を埋めて見られないようにする。
土方さんは呆れながら言葉をつづけた。



土「…大事な話がある今すぐ俺の部屋に来い」
 

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