桜花乱舞

□第弐拾陸話〜蒼鬼姫〜
1ページ/4ページ

千鶴を肩に担ぎあげた風間は私に刀の剣先を私へと向けた。
月明かりが二人を照らす。


千景「怒らせた…だと…?笑わせるな」


鼻で笑いヒュッという風切り音と共に頬を斬りつけた。
痛みが走り血が滴るが…傷口は直ぐにふさがれた。


翡翠「誰に逆らったか…分かっているのだろうな」


冷たい声で言い放てば心の中が黒い淀みに嵌っていく。
目の前にいる風間を睨みつけた。
彼は黄金色の瞳となり、私をただ黙って見据えていた。


千鶴「翡翠さんっ…風間さん達の目的は私ですっ逃げてください」


逃げる…だと?私が?
仲間を見捨て置いて…そんなことができるわけがないだろう。
只でさえ…今まで"人として生きていた"のだから
鬼としての感覚を取り戻すのは悪くないと思っていた。



翡翠「…余程、死にたいのだな」


後ろに気配が生まれて勢いよく振り返る。
私にめがけ双剣と刀が交差し合った。
ガキィン、ガキィン。
繰り返される剣戟。一振り一振りが重たい。


黒耀「くくっ…千景の命令だからな…アンタを半殺しにして郷に連れ帰る」


紫黒色の髪の毛を光らせた隙間から見える血のように染まる瞳。
先程とは全く別物の人格だった。


翡翠「ぐっ…」


黒耀「姫、アンタの力はこんなもんか…よっ」


ドスッ、と鈍い音が響けばお腹から背中にかけて刀が突き刺さっていた。
ぐりぐりと奥を抉りながらズルっと音を立てて抜く。


翡翠「ぐっぁっ…つっ」


焼けるような痛みが全身を貫く。
流れ出てた血は地面を赤く染め上げ着物をも染める。
疵はゆっくりと確実に修復していた。
視界がぼやける。


黒耀「…んじゃ…気絶してもらうぜ」


刀が振り下ろされようとしたとき。
パキッと黒耀の手が凍りついて足も氷で覆われていた。


千景「……ほう…出たか本来の力が」


腹を抱えて地面に膝をついていた翡翠の周りに
うっすらと明るい青色で円陣が浮かび始める。
それはぐるぐると彼女の周りを回って淡い光が地面から現れ
それは天へと消えていく。


土「っ…おいっ…西園寺っ」


土方さんの声がどこか遠くで聞こえる。
もう…何を考えればいいか分からない。
ただ、今は目の前に居る千鶴を助け出さなければいけない。


翡翠「…消え失せろ」


頬には青い文様、髪の毛は白銀に染まり
額からは五本の角が。
薄らと開かれた瞳は黄金へと染め上げられていて…。



千景「美しいな」



感嘆のため息をついていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ