桜花乱舞

□第弐拾弐話〜血に狂う者〜
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千鶴「あの、薫さん?私のこと覚えてますか?」


薫「ええ、新選組の人と一緒にいた人ですよね」


総司は仏頂面で千鶴と薫のやり取りを見ている。
薫と千鶴は他愛もない会話をしているだけだった。
ただ、気になるのは彼女が千鶴と話している最中、私の方をチラチラとみてくる。


翡翠「なぁ総司…私の顔に何かついてるか?」


隣居る総司に聞いてみれば彼は少し驚いたような顔をしてくすっと苦笑した。


総「ん?どうしたの…何もついてないよ?」


翡翠「そうか」


そしてまた再び彼女たちの会話を聞く。
話題は三条大橋の制札事件についてだった。



あの晩…千鶴に似た女の人を見たと左之が千鶴に出かけたことを確認していたが
本人は何のことか分からず…とりあえず、落ち着いたらしい。
千鶴は確信をつくような質問をした。


千鶴「秋の晩…貴女は…薫さんは三条大橋にいましたか?」


薫「ふふっ…どうでしょう…昼間は普通に通りますよ?
夜なんて…制札騒ぎで近づけやしません」


総「最もな答えだね…はぁ…めんどくさい」


翡翠「めんどくさいなどいうな総司。」


薫は私と目が合うとふっと笑って小さく口を動かす。


―――のんびりしていられるのも…今のうちですよ?翡翠姫



"翡翠姫"―――?



私は彼奴に…下の名前は…教えたか?
にしても何故…姫の敬称がつくのか意味が分からない。



また、感情がぐちゃぐちゃになりそうで。



総「翡翠大丈夫?」



翡翠「大丈夫だ…大丈夫」



千鶴「沖田さん、先に屯所に戻っていますね」



千鶴は雑踏に紛れて…屯所へと戻っていった。


色々ありすぎて疲れる…ここで帰りたいと思った…隣で総司が軽く咳をしている。


翡翠「総司っ!?」


総「こほっ…こほっ…だ…大丈夫だから…ね?」



彼の病気を知っている私にとって…彼が咳をしている時
自分は無能なんだと実感させられてしまう。


翡翠「っ………」


総「そんな泣きそうな顔しないで…僕は大丈夫だから…ね?」



片手で口を押えながら咳をする。


翡翠「総司…」


私は、総司の背中にしがみ付くことしかできなかった。
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