桜花乱舞
□第拾伍話〜軋み始める歯車〜
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閏五月。
現在、私達新選組は西本願寺に居を移した。
理由としては山南さんを伊東さんから隔離するためと、新人隊士が大幅に増えたこと。
それ以来、山南さんとすれ違うたびにあの夜の出来事が鮮明に思い出される。
そして…怪我した左肩の傷の治りの早さ。
此処最近、自分自身がなんなのかわからなくなっていた。
翡翠「私は…人…だよな。」
自分の手のひらを見て、そう呟く。
そう、私は人…だ。人として生きてきた。
総「翡翠ー、翡翠ってば。巡察に行くよ?」
翡翠「ああ。分かった。」
私は総司に言われて巡察だったことを忘れていた。
浅葱色の羽織と、鉢金を持って…総司のところへと向かった。
*
総「うわぁー…相変わらずの人の多さだ…嫌になっちゃうなぁ…。」
翡翠「総司…京に来て何年になるのだ。…いい加減慣れろ。」
私と総司は一番組と十一番組の隊士達が前に並んでいてその後ろにいた。
…ま、京はいい所だからな。甘味屋もあるし。
すると、逆の方向から遠巻きにだが、平助と千鶴が見えた。
総司は気づいているらしく異様なまでに近づいてきた。
平「お?相変わらず仲いいな!総司と翡翠はさっ!」
総「うるさいよ。平助。こんにちは千鶴ちゃん。」
千鶴「あ…はい。こんにちは。」
翡翠「平助、変わりはないのか?そっちは。」
訪ねてみれば返答をするようにニコッと白い歯を見せる平助。
私はホッ、と胸をなでおろした。
総「ねぇ…翡翠…もうすぐ…将軍上洛の時じゃないかな。」
【将軍上洛】そう、現在の将軍が京に来るのだ。
きっと警備やらなんやらで駆り出されるに違いない。
京の警備は重要で、上のほうからも自然とめにとまる。
翡翠「初めて来た時に見た…将軍上洛…見物人に紛れて私達は見ていたが…今は。」
平「京で見回りしてるし、戦で成果上げてるし…あの頃に比べれば大分よくなったよなぁ…。」
千鶴「そんなに…大変だったなんですか?」
千鶴が聞けば平助はコクリ、と頷いた。
翡翠「千鶴、またそれについては…いつか話す。」
千鶴「はい」