桜花乱舞
□第漆話〜池田屋事件録3〜
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私は目の前に刀をその浪士に突きつけられた。
紅色の瞳は私を静かに映すだけで…。
?「ふん…所詮は吼えるだけの犬が。」
そういって再び、刀を振り下ろす。
シュッ、とまた再び私の首筋に赤い鮮血が滴り落ちる。
翡翠「痛っ………。」
シュウ…と、頬につけられた傷と首筋に付けられた傷が見る見る塞がっていく。
傷の直りの早さは人並み以上だとは分かっていた。
目の前の浪士はそれを確認すると、空気がガラリと変わり大きく髪の毛がゆらゆらと動き出す。
…彼の紅色の瞳は鮮やかな黄金色に変わっていた。
何が起こっているんだ…神々しさを感じる…。
チリッ、と頭に僅かな痛みが走った。
こんなことは今までになかった。
それより、総司は蹴られてもなお、立ち上がろうとする。
総「…翡翠を傷つけた代償は大きいよ?君の相手は僕だ。彼女に手を出さないでくれる?」
?「貴様らにとってその女は何もない…だが我々にとっては大事な【姫】なのだ。」
総「は、何言ってるのかな。彼女は【新選組】の翡翠。
君たちには接点とか何も無いはず。」
ぐら、と身体を揺らしながら立ち上がる。
私の目の前には総司の背中が見える。
…守られている…。守る側の立場なのに…。
?「愚かな。その負傷で何を言う。今の貴様なぞ…そいつの盾の役にも立つまい。」
瞬間、総司は焦るかのように
総「−−黙れよ、うるさいな僕は、役立たずなんかじゃない……!!!!」
きっ、と若草色の瞳をその浪士へと向ける。
翡翠「総司っ!?声を荒げるな…!!さっきお前は血を吐いたばっかなんだぞ!?」
…ただ、純粋に総司が心配で。
私も声を荒げることしかできなかった。
浪士は、私の方を見て、なぜか悲しそうに瞳を細めて刀を納める。
?「会合が終わると共に…【我々】の務めはも終わっている。
翡翠、と言ったな貴様は…何れ…【思い出す】であろう。」
サァッと風が吹いた瞬間
目の前にはその浪士がいなかった。
【我々】、【思い出す】、【姫】
全部…私に向けられた言葉…。
一体私とアイツにはどんな関係があるんだ…。
それを考えるとまた再びチリッと頭に痛みが走る。
翡翠「痛っ……。」
…何か、私にはあるんじゃないか?
そう思うしかなかった。
それよりも私は総司が心配だった。