桜花乱舞

□第伍話〜池田屋事件録1〜
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元治元年六月…。
千鶴の外出が許可され父捜しも始まった頃。
今日の巡察の当番は総司と私だ。
無論、千鶴の外出は幹部級である私達と行動するのが必須になる。


浅葱色の羽織が翻る。
大勢の人が行き交う道を私と総司は、千鶴の小さな背中を見ながら歩いていた。


翡翠「総司…良かったな。千鶴の外出が許可されて。」


総「んー…いいのか悪いのかさっぱり分からないけど…彼女にとってはいいことかもね?」



そういいながら小さな背中を見る。
あれを抱えているのは相当なものなのだろうと思ってしまう自分がいる。


##NAM#1##「千鶴、何か収穫はあったか?」


こちらを振り向いて駆け寄ってくる千鶴。
それは、悲しげに瞳を伏せて


千鶴「いえ…何もありませんでした…。」



千鶴は瞳を伏せて答えるだけだった。
…何も協力できていないのが悔しかったりもするのだが…。


総「翡翠、今って六月だったっけ?」


唐突に話題を変えてきた総司。


翡翠「そうだが…それがどうかしたのか?」


総「祇園祭が近いね…あ、でも攘夷派浪士達の活動も活発になってくるなぁ…。
翡翠と祇園祭…楽しみだったのになぁ…。」


…何を人前で口説いているんだ。コイツは。
今は巡察の時間であって無駄話をしている時間帯ではないのだぞ。
…まぁ、楽しみなことには否定はしないが…。



そして巡察を続ける。
京の大通りには一番組と十一番組が歩く。
ーーやはり、そうか。
浅葱色の羽織を目に入れるだけで人々は道端に寄っていく。


翡翠「無難だな…この浅葱色の羽織も…。」


千鶴は千鶴で私達から離れたところで積極的に網道さん探しをしていた。
…しばらくたって、千鶴が何人目かになったとき…。



町人「そんな雰囲気の人なら、しばらく前にそこの桝屋さんで見かけたよ」



その話は私と総司の耳にも入ってきた


総「しばらく前って…どれくらいだうね。」


翡翠「…ということは生きている、ということか。」


千鶴と町人の会話を盗み聞きしつつも私と総司は進んでいった。
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