時代の遊子

□弐拾弐頁目〜廻ル者〜
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どうすればいい?どうすれば…この惨事から抜け出すことができる?
目の前に怒っている出来事は全て昔にあったこと。
全て、知っている。


…破れた葵の旗は血と泥で汚れていた。


「むかわなければ」


村へと歩を進めるたびに、思い出されるのは全ての始まり。
一歩、一歩、歩んで行けば確かに村へと近づく。
歩きながら…あの惨劇を思い起こす。



『――父上、貴方は罪を犯した…同族殺しの罪を…』


泣きながら幼子は立ち上がり懐に隠されていた紅葉の飾りがついた短刀を抜いた。
それは、淡い黄色を放ち切っ先を己の父に向けた。


『…コロ…セ……、今スグ…』


目から光が消え過去の妾を振り下ろす。
刃は冷気を放ち辺り一帯を凍らせた。



『うっ…うっ…ううう…』



彼は己の手で父を殺めることを理解して青灰の瞳から涙が毀れ落ちた。
切傷はみるみる消え、空は段々と晴れていく…。


ガシャンガシャン


鎧が軋む音が聞こえ振り向いた。
荒く息をしながら歴史を無かったことにしようとする遡行軍。


麟翔「……妾の相手は貴様だ」


己を抜き放ち、これから起こるであろう出来事を見守るため道を塞いだ。


鶴丸や石切丸は未だ別の場所で戦っている。
五十鈴がかけつけてもおかしくない。
これから起こる出来事を彼女も知っているのだから。



麟翔「叢雲派が一人、櫻華麟翔…妾を敵にしたこと後悔するがよい」



「鬼ノ歴史…消エロ…!!!」



敵は大上段に振り上げてくると妾は咄嗟に交わして水平に切り上げる。
桜色に染まる刃は刻んでいくにつれ色を増してくる。
残光は桜色を帯び、冷気を帯び始めていた。



(――――姉様ぁっ気付いてくださいましっ…お願いですっお願いですっ)



(いす…ず…)



ガキィンと刃が弾かれた音が聞こえた。
背中に冷や汗が伝い落ちる。
五十鈴の本体は父と呼ばれた人を貫いていた。


『――これからは…俺が…鬼の一族の頭領として…お許しください…父上…』



ズルッ、音を立てながら五十鈴を抜くと震えた掌から滑り落ちた。
刀が折れていない…何故だ…?確かにあのとき五十鈴は折れたはずだった。


物陰から気配がして其方に首を向けた。
其処に居たのは…。



『―――裏切り者…貴様、名を名乗れ』



『名乗る程の者でもないですよ…?西園寺様』



麟翔「雪村…網道…?」



敵を鎮めた。そこにいたのは…審神者であり、翡翠姫の村を滅ぼした張本人。



麟翔「何故…何故っあ奴がこの時代にっ…」



弐拾弐頁目〜廻ル者〜
 

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