時代の遊子
□弐拾壱頁目〜忘却した記憶〜
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五十鈴が来てから本丸は一層騒がしくなった。
特に…粟田口の奴らが。
奇跡的…というより、主に嘆願し彼女とは同じ部屋にならないようにしてもらった。
麟翔「はぁ」
溜息しか出ない。
すれ違うたびに嬉しそうな顔をして挨拶してくるのだ。
如何して、如何して…破壊させた本人に向かって変わらず接することができるのか。
麟翔「私は―――」
?「わっ…っと久しぶりだなっ櫻華麟翔」
後ろから騒がしい声がしたと思い後ろを振り向いてみれば…。
純白の着物を着た刀剣男士が居た。
麟翔「誰だ?」
鶴丸「おいおい…忘れてるってのは驚きだなあ…俺は鶴丸国永だ」
鶴丸国永と聞いて記憶を巡らせる。
そういえば…どこかで在ったような気もしなくはない。
鶴丸「麟翔、君の事は知っているさ」
麟翔「何故、妾のことを」
鶴丸「さぁね…それは内緒だ。あ、そうだ…君を主が呼んでいた」
主に呼ばれているということはそれ相応の事情なのだろう。
##MAME1##は寝間着から着替えて主である翡翠の部屋へと向かった。
*
何時もならば主の部屋は騒がしい。
然し、異常なまでに静かな気がした。
妙な空気を感じ取って障子を開けるのに戸惑う麟翔
翡翠「麟翔か?入れ」
主の声は今までになく低く何か遭ったことを察した。
失礼します、と小さな声で言い中に入る。
麟翔「…?」
部屋の雰囲気が依然と違うことに気付いた麟翔は周囲を見回す。
翡翠「麟翔…一枚目の結界が何者かによって破られた」
結界が破られたと聞いて心の奥に重石が乗った。
本丸の結界は主自身の霊力で保持されている。
しかし…一人で保持するのは難しいので神社に奉納されていた
次郎太刀、太郎太刀、石切丸、蛍丸で結界番という当番で保持している。
麟翔「犯人は…何処に?」
翡翠「相手は…関ヶ原に逃げた…。」
関ヶ原と聞いて脳裏に過ったのは五十鈴の顔。
虚ろな瞳で小さな声で「姉様」と呼ぶ。
翡翠「第一部隊の隊長は…鶴丸、麟翔、五十鈴、石切丸、薬研、今剣だ」
麟翔「御意」
嗚呼…つくづく運が無い。
弐拾壱頁目〜忘却した記憶〜