時代の遊子

□弐拾頁目〜罪悪感〜
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五十鈴『ねぇ、さま』


麟翔『五十鈴っ、五十鈴っ…喋るな』


如何して今になってこの記憶が蘇る。
捨てた筈の記憶を如何して…。
これが夢の中だというのは分かっている。
手を握れば弱々しく握られた。



麟翔『妾がっ…妾が…飲まれなければ』



破壊されないのかと思っていた。
しかし所詮は刀…崩壊という死は"幻"と謳われていても終わりはやってくるのだ。


五十鈴『ねぇさま―――』


麟翔『喋るなっ…』



短刀は脆い…ならば…もう、関わらなければいい。
何と言われようが関わるとつもり等ありはしない。



麟翔「…また、か」



頭を抱えて自嘲気味に笑う。
嗚呼、ほら同じ夢を何度も何度も繰り返し見る。
激しく鳴る忌まわしき鈴はチリンと音を立てる。
昨日のように激しく鳴っていない。



薬研「よう」



麟翔「女性の寝室に忍び込む等…如何いう教育をしているのだ?一期の奴は」



薬研「いち兄は関係無いさ…ただな…あんたに用事があるだけさ」



薬研は妾の隣に座った。
白衣のポケットから出された…一枚の書状。
其の字は主の物だった。



薬研「…明日、五十鈴が来るらしい」



手紙の内容からして明日、大広間に呼ばれるのは
薬研、妾、石切丸、岩融、今剣だった。
呼ばないでくださいと嘆願しても…かなうことはなかった。



麟翔「…主は…」



きっと知らないのだろう。
もう…五十鈴にあう刻が迫ってきていた。



薬研「…もう、寝た方がいいんじゃないか?」



麟翔「嗚呼、そうさせてもらう」



妾は明日来るであろう嘗ての仲間に思いをはせつつ布団に身を投じた。






弐拾頁目〜罪悪感〜
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