時代の遊子

□拾捌頁目〜幻ノ薙刀〜
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翡翠「……これは」


鳥羽伏見からの報告書を読んでいた翡翠は目を疑った。
其処には何かの声と鎖の音が聞こえたと。


石切「…今いいかな?主」


障子が開いて彼は部屋に入ってきた。
真剣な顔つきで真っ直ぐに翡翠を見た。



翡翠「石切丸この報告は本当か」


石切「嗚呼。確かの情報だよ」



その報告書に書かれていたのは嘗て麟翔と共に最強と謳われた薙刀
――夜刀神朱漣――についてのことだった。



翡翠「…時の政府が所持しているのか」



夜刀神朱漣――
彼女も又、翡翠が持つべき家宝の一振りであった。
叢雲木賊が打ったとされる薙刀。これが今時の政府の下にあるとなれば。



石切「…困ったね…これは」



翡翠「所在の確認はできるコトは不可能だな」



場所が特定不能で抑々なぜ時の政府に渡ったのかが見当がつかない。
何しろ翡翠の本丸は特殊扱いになっている。
易々と政府本部に出入りすることは不可能に等しい。



石切「主…命令を」



翡翠「…暫くは様子見だ…各々…次の戦に備えておくように」



石切「了解したよ」



彼は立ち上がり、退室した。
其処には壁に靠れかかる麟翔の姿が。
色の違う眼差しを石切丸へと向ける。



麟翔「主はなんと」


石切「朱漣が…時の政府の所にいるかもって」


麟翔「そうか」


彼女の横顔は非常に悲しげなものだった。


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