時代の遊子

□拾漆頁目〜別れの刻〜
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がしゃがしゃ。

音を立てながら…とんでもない大きさの敵が二人の目の前に立つ。


加州「さぁーて…どうしようか?」


大和守「またそんなこといって…折れても知らないぞ」


加州「うるさい」


悪態をつきながら目の前にいる敵に切っ先を向けた。
静かに敵も目の前にいる加州と大和守に刀の切っ先をむけた。


二つの間にびりびりとした殺気が包んでいる。
遠くから聞こえる藩士が撃つ銃声音。
軋みあう鉄の音。まだ麟翔さん達は戦っている。


加州「はぁーめんどくさいなぁ…よし,行くよ」


二人は背中合わせから地を蹴り次々と斬り倒していく。
そして…目の前で苦戦している嘗ての主が…居た。


総「苦っ…」


戦っているのは…時代遡行軍…早く早く倒さなければ…。
沖田総司は…此処で死んで良い人ではない。


加州「行くよっ…」


大和守「ああっ」


大きく振りかぶってきたその敵は総司を消そうとしていた。
しかし、それは二人の突きによって…消えた。


総「あれ…キミ達…まだ此処に居たの?」


時代遡行軍が消えたことを確認して二人は顔を見合わせてこくりと頷く。
加州は筒袖を纏う元主をまじまじと見つめる。


総「…助けてくれて…有難う…名前は?」


元主との接触は禁忌…。しかしどうしてもどうしても言いたい事があったのだ清光。
それをただ安定は後ろの方で見守っていた。


加州「無理…しないで…アンタには……まだ"これから"があるんだから」


そういうと加州と大和守の周りにゆらうらと光の珠が浮かぶ。
もう…ココから離れないといけないらしい。


麟翔「総司っ総司っ」


遠くから走ってくる今の主は頬から血を流していた。



総「麟翔…大丈夫だった?そっちは」


麟翔「ああ…なんとか…な」



今の主は加州と大和守の方を見るとニコリと笑って
声に出さず言う。



加州「ははっ…馬鹿な人」


大和守「……もう。」



二人はくすくすと笑い合って鳥羽伏見から消えた。


目を開けてみれば其処には翡翠と石切丸が。



翡翠「…接触したのか」


加州「まぁーね」


満足げに笑って麟翔は踵を返す。
麟翔は何も言わず本丸へと歩を進める。
石切丸はただ静かにその光景を見守っていた。



石切「何も…無ければいいのだけれど」
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