時代の遊子

□拾漆頁目〜別れの刻〜
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僕の記憶の中に残るのは皆が慌てて屯所を駆け抜ける姿。


加州『安定』


ぽんと僕の肩を叩いて覗き込む清光。
表情はとてもうれしそうだった。


大和守『何?清光、嬉しそうだね』


加州『んー?そりゃあそうでしょだって久しぶりにあの人に使ってもらえるんだからさ』


大和守『僕はお留守番だよ。いってらっしゃい』


今でも思い出す、あの時の事。
もし、もし僕が清光の変わりに折れていたら…
沖田くんは悲しんでくれたのかなって思ってしまう。


総『…ごめんね』


部屋の中で、沖田くんは折れた清光の刃を見て悲しそうに笑っていた。



"安定"



もう、あの頃の声は聞こえない。大事な大事な相棒はもういない。
そうだ…折れてしまったんだ。



大和守『…きよ…みつっ…』


主の部屋の縁側で僕は一人、相棒の入っていた鞘を抱きかかえる。
冷たい雨が降りしきる。頬を濡らして伝い落ちる滴。


加州『……ご…め……やす……さ…』


彼が消えかける。手がだんだんと透けてくる。
逝かないで、逝かないで清光。


大和守『…おい…冗談だって言ってよ…ねぇ…ねぇっ…』


加州『は…は、ね…ぇ…泣かない…でよ』


にこりと笑って、清光は消えた。


今…戦場で一緒に戦えていることに感謝をしないといけない。
そして…あ麟翔さんもいる。何て心強いのかな。



沖田くんは筒袖に身を包んで戦っている僕らの方をただじっと見ていた。



大和守「視られちゃってるね清光」


加州「さぁー…何処見てるんだろうね…っと」


ザシュッと横で薙ぎ払えば斬られて消える敵。
そして目の前には禍々しい空気を纏わせた…ものがいた。


総「……君たちは…いったい…どこからきたの?」


刻一刻と、別れの時間は迫ってきていた。



拾漆頁目〜別れの刻〜
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