時代の遊子

□拾陸頁目〜正面突破〜
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麟翔達は背中合わせになっていた。
突破口を探りながらじりじりと時間だけが経っていく。


加州「くそっ…あと少し、あと少しなのにっ」


石切「落ち着くんだ加州くん…焦っていたら…何も見えなくなってしまう」


麟翔「正面突破で行くか」


そう言った時、加州と石切丸が一緒に妾の方に
勢いよく振り向く。
妾はチラと、二人を見てコクリと頷く。


石切「はぁ…随分な余裕があるんだね…」


ため息をつきながら苦笑する石切丸はやれやれと呟いた。


加州「ふーん…麟翔さんが殿を務めるのはちょっと癪だなぁ…」


歩きながら私の隣へと歩いてきた加州は突きの構えを見せた。
石切丸は目頭をつまんで何かを呟く。


石切「二人とも…怪我だけはしないでくれ」


麟翔「了解した」


加州「分かってる」


ほぼ同時に、妾と加州は地を蹴った。
襲いかかってくる敵を次から次へと斬り進んでいく。


無残に散らばる敵の残骸は砂になって消え
風に吹かれてどこかへと飛んでいく。
それでも、それでも戦い続けなければならない。


麟翔「……大分…減らしたか?」


加州「……っ…あれは…」


加州が真っ直ぐと見据えた先に…。
刀が鞘に納まったまま戦う沖田総司がいた。


総「…ねぇ、どうして抜けないのかな」


苛立ちを含ませながらそれを抜こうとするが固く閉じられていて
一向に抜けない。


麟翔「…加州…叫べ…相方の名前を」


加州「主に愛されたいんだろ!?安貞っ!」


*


声が、聞こえた。
愛されたいんだろと言う清光の声。


――そうだよ、僕は愛されたい。


沖田くんの幸せを第一に考えてるんだ。
お前だってそうだろ?清光。


総「どうしてっ抜けないのかなっ」


駄目だよ、沖田くん。
無理しちゃ…。


――ああ、早く行かなければ。


大和守「今…行くよ…清光」


僕は、自分を縛る鎖を破壊した。
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