時代の遊子

□ 拾壱頁目〜主との契り〜
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瑠璃色の髪の毛、空色の瞳。
…何故、貴女様がいるのですか…主。


翡翠「今剣、彼女は…?


今剣「あ…、えっと…かのじょはぼくとおなじさんじょうはのおうか麟翔ですよっ!」


今剣が麟翔と言った瞬間、その人は大きく目を見開いて此方を見た。
信じられない、とでもいうような。


翡翠「今剣、先に部屋に戻っていなさい…少しだけ、彼女と話がある。」


今剣「わかりました!あるじさまっ。麟翔、あるじさまをいじめちゃだめですよっ!」


今剣はそういうと軽やかな足取りでそこを出て行ってしまった。
…正直、今この空気がとても気まずく感じる。
何から話せばよいのか…どうすればよいか全く分からなくなっていた。



翡翠「そうか、付喪神の時はそんな姿なのだな。」


ふっ、と笑って目の前に立つ主。
彼女は…"鬼"と呼ばれる古来から日本にいる生き物。
そして彼女は鬼の頂点を統べる血族に生まれた
妾は…、その家の家宝として存在していた。




麟翔「我が名は桜華麟翔…、生まれは平安。刀派は三条だが…叢雲木賊が打った太刀…。
主、妾は再び主に会えたことを嬉しく思います。」




また、こうして、貴女に仕えることができるのは
刀としてとてもうれしいです。
しかし、主の顔は…なぜか悲しげに笑っていた。




翡翠「私は…お前を鬼榊ノ社に封じたのだぞ。お前は…それに怒らぬのか…?」




麟翔「妾は…怒っておりませぬ…寧ろ…妾は静かな時間をすごさせて頂きましたゆえ…
主の命の侭に、妾は敵を斬っていくのみです。」




…歴代の主もそうだった。平和を好み、人との介入をしようとせず
一族の危機のときのみ妾の力を解放する。
しかし、翡翠は…必要以上に殺傷を好まず
仲間の危機が訪れようとも力を解放しなかった。



ーーーそんな貴女に、妾は惹かれたのです。



それでも、言葉を交わすことなどできなかった。
所詮はモノという存在でしかない刀はただ斬ることを仕事とするのみだ。


主は辺りを見回して誰もいないことを確認すると、真剣な瞳をして私に語りかけた。
それは、警告とも呼べるべき言葉で。


翡翠「…麟翔、ひとつ、契りを交わしてくれぬか?」



真剣みを帯びた瞳で、妾に語りかけてくる主。
それは、何を意図しているのだろうか。
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