時代の遊子
□肆頁目〜忘れた筈の思い〜
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土『新選組…副長…土方歳三推参っ!此処から先は会津藩であろうと通さねェ!』
冷たい潮風が、岬に立つ青年のほほを掠めた。
青年は、悲しげに…五稜郭の方向を見る。
?「あそこに…兼さん…いや、和泉守兼定が…封印されてるんだ。」
"和泉守兼定"
新選組の副長土方歳三の太刀…。
刀派はかの有名な兼定だが二代目ではなく十一代目、十二代目が打った刀とされる。
響き渡る轟音と共に命が散っていく。
大政奉還で将軍から天皇へと実権が移り。
それと同時に…
ーーー彼ら、否、新選組は"反政府軍"として扱いを受けた。
京での栄光など…誰も知らない。
ただ、民衆が耳にするのはすべて悪い噂のみ。
翡翠『…私たちはどうなってしまうのでしょうか…土方さん』
土方『さぁな…ただ、武士としていただけなのに…いつの間にか大事なものを見失っちまった』
切なげに答えていた主。
そしてその隣にいたのは新選組唯一の女隊士西園寺翡翠。
主の切なげな顔は、彼の胸をも痛めていた。
――人を斬るだけの道具にしかならない彼は
――ただ、主の大切な人を"守りたい"と願う彼らは
――いつの間にかたくさんの思い出を過去に
置いてきていたのだ。
肆頁目〜忘れた筈の思い〜