綴手記〜色彩ノ華〜

□仁義なき戦い〜布団を馬糞から守れ〜
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冷たい風が本丸を吹き抜ける。
布団を干す場所に後藤と厚は居た。


厚「おっしゃ一通り…干したな!」


後藤「引き分けだな厚」


どれだけの量が干せるかという競争をしていた二人は
自分たちが寝る布団を含め弟たちのそれも全て干していたのだ。


厚「んー…眠いな」


後藤「まだ寝ちゃダメだろっ」


ぺちっと軽く額を叩くと厚は膨れっ面になった。
隣で笑う後藤を盗み見て彼もくすくすと笑う。


後藤「何がおかしいんだよ」


厚「いーや…別にただ面白いな、ってさ」


冷たい風が二人の間を駆け抜ける。
空を見てみれば綺麗に晴れ渡っていた。


後藤「あー…気持ちいな」


寝転んでしまえば自然と睡魔が襲いかかってくる。
その時だった…べちゃっと何かが彼の顔横に落ちてくる。


厚「ん?これって…」


飛んできたものに顔を近づけてみればとんでもなく臭く厚は鼻を摘まんだ。


厚「くさっ…」


後藤「鼻が…鼻がもげる」



それは紛れもない厩のもの…無論馬糞だった。
せっかく干したのに…爽やかな気分が台無しになった。


鯰「ちぇっ…当たらなかったかー」


悪戯めいた笑みを浮かべた鯰尾は二人を見るなり第二弾を投げつけようとしていた。
後ろに広がるのは…白く輝く布団。
守らなければ…今夜は畳の上で雑魚寝になる。
それだけは避けたい。


厚「おいおい…まずくねぇか…」


後藤「鯰尾兄の…目が本気だろ…」


二人同時にスコップを構えて今すぐ投げようとする兄を見る。
キラキラと目を輝かせながら顔はまみれていた。
どこからあの量を…と言いたい。
が、聞く耳を持たないだろうなぜならすでに臨戦態勢だから。


厚「鯰尾にぃを止められる術を持ってるのは…」


後藤「骨喰兄さんだけど…」


厚「そうえいば骨喰にぃはどうしたんだ」


後藤「…残念なことに…遠征」



瞬間、厚の顔に絶望の色が浮かんだ。
後藤はそんな彼を見て軽く肩を叩く。大丈夫だろと呟いて笑えば
厚もそうだなと答えて立ち上がる。


鯰「さぁ…行きますよっ厚、後藤っ」


厚「弟達の布団を守るのは」


後藤「俺たちだぜっ鯰尾兄っ」


それを皮切りに物凄いスピードで馬糞が投げつけられる。
持っていた布団叩きでバシンと勢いよく叩き落とす。


鯰「やりますねっ…これならどうだっ」


投石兵を使い馬糞を投げさせた。
投げた投石兵もダメージを負っていたのだ。


後藤「ちょっ、鯰尾兄っそれどこからっ」


飛んできたそれを交わしながら鯰尾に問いただす。
すると彼はけろっとした顔で


鯰「…え?空いてたので勝手に拝借しました」


阿保毛をぴょこんとさせながらにこやかな笑顔で答えた。


厚「後ろいっただきぃーっ」


本丸の屋根に駆け上り兄の方へ飛ぶ。
声に気付いて咄嗟に身をひるがえした鯰尾。


後藤「いけっ…厚っ!」


厚「そぉらよっと」


投げつけたのは最恐ともよばれるくさやだった。
着地した厚の顔には…洗濯バサミがついていた。
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