時代の遊子

□拾漆頁目〜別れの刻〜
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彼らは時ノ廻廊へと戻った。
鳥羽伏見は終わり加州と大和守は静かにその地へと続く門の前に立つ。


加州「……」


眼を閉じて池田屋であったことを思い浮かべる。
辛いこともあっただけどああして接触したことによって
未練はもうない。


大和守「…もういいの?清光」


軽く相棒の肩を叩いて顔を覗き込む。
振り向いて口角をあげた。
清々しい顔をしている。


加州「もう未練なんてないさ。安定は?」



大和守「僕も未練はないよ」



麟翔「…もうよいか加州、大和守」



「「ああ」」



二人は声揃えていう。
それに頷いた麟翔は"封"と書かれた札を門に貼る。
するとけたたましい金属音が辺りを響かせる。


ガシャン


石切「扉は閉じたみたいだね」


石切丸は扉が封印されたことを確認すると
本丸の在る方向へと踵を返す。
それに続いて麟翔と加州と大和守は歩き出す。



?「―――オレは………」



突如響いた声に反応した麟翔。
その声に聞き覚えがあったのか勢いよく振り返る。



石切「麟翔?どうしたんだい?」



先頭を行っていた石切丸にもその声が聞こえたのか彼女のもとへとやってくる。
そして、その声は再び響いた。



?「――離せっ離せっオレをっ…オレを元の世界にっ」



ガシャンガシャンと鎖が軋む音が響き渡る。
音はどうやら石切丸と麟翔にしか聞こえていないらしい。



麟翔「…朱漣っ…何処だっ何処に居るのだっ」



石切「夜刀神の声…」



石切丸も麟翔同様辺りを見回すが声の本人はいない。



麟翔「…どこだっ…どこだ朱漣っ」



頬に涙を浮かべながら彼女は廻廊を見渡す。
声は聞こえているだけで…本人がいない。



石切「麟翔、そろそろ扉が閉じてしまう…いったん本丸に戻ろう」


石切丸は彼女を引き寄せてひたすら続く長い廊下を走る。
どうにもならない…力になれない。
そんな自分が浅ましいとさえ思ってい舞う彼。


――きっと三日月なら


しかし天下五剣の彼は一向に本丸に現れない。



石切「早く来てくださいよ…三日月さん」



拾漆頁目〜別れの刻〜【完】


拾捌頁目〜幻の薙刀〜へ続く。
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