桜花乱舞

□第弐拾弐話〜血に狂う者〜
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『兄様っ…兄様っ』


――嗚呼、またこの夢か。


血を流しすぎる度に、何時もこの夢を見る。
其れは決まって…同じ場所で終わるのに…。
今回は違った。


『はっ…はっ…は…』


少女は刀を持って、走り出す。
後ろを振り向いてはいけないと…何故か本能がそう警鐘を鳴らした。


『…姫様…――様はどうしました?』


『――、兄様は…兄様は郷に…兄様は私に逃げろって、結界の外へって』


その人の顔は暗くて分からない。
しかし…どこかで聞いたことのある声だった。
彼は踵を返して…郷の方へと向かう。
ひたすらひたすら走った。


『おじさん…だぁれ?』


『…やぁ…私の名前は―――』


其処で、夢は途切れた。


翡翠「う……」


千鶴「良かった…!翡翠さん…大丈夫ですか?」


翡翠「千鶴…怪我は大丈夫か?」


千鶴の腕に触れてみると彼女は困ったように笑いながら大丈夫ですと答える。


彼女は意を決したかのように腕の包帯を外した。


千鶴「実はもう…治ってるんです…気味悪いですよね…」


千鶴の傷口はふさがっていた。
"もう治っている"と確かにいった千鶴。


千鶴「翡翠さんは動いて大丈夫なんですか?」


翡翠「……ほら」


パサ、と着物を脱ぐと肩から背骨あたりまであった傷口はふさがりかけていた。


翡翠「生まれつき…傷治るの早いんだ…私も」


千鶴は驚いた顔をして私を見た。


千鶴「…そう…なんですか」


私と千鶴は色々な話をした。
途中、土方さんとあったが「部屋に戻っとけ」と言われしまい
素直に引き下がったのだった。




これから、起こること…何も知らずに。



第弐拾弐話〜血に狂う者〜【完】




第弐拾参話〜桜舞ウ別レ〜へ続く
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