桜花乱舞

□第弐拾弐話〜血に狂う者〜
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その日の夜は相変わらず変わらない日だった。
ただ、何となく…異様な雰囲気ではあった。
千鶴は寝るために部屋へと戻り、幹部隊士達は広間にいた。


総「…ねぇ…一君、南雲薫って…子知ってる?」


総司は壁に靠れながら隣に居る兄上に質問をした。
兄上は眉を顰めて


一「……知らん」


総「えぇ…本当かなぁ…何か、向こう君の事知ってた…みたいな感じだったけど?」


翡翠(…南雲…薫か…)


彼女は私と目が合うと何故かにこりと不気味な笑みを浮かべている。
その瞳には強い悔恨さえ感じてしまう。


一「…翡翠?どうしたのだ」


翡翠「いえ、何でもありません…兄上」


総「…何でも無くないでしょ。翡翠、彼女を追いかけてる時…顔色悪かったでしょ」


総司がそういうと兄上は細くため息をついた。
幻滅されてしまったのだろうか…兄上のため息をそうとってしまった。


一「体調悪いなら悪いと言え…。」


顔を覗き込まれて兄上の綺麗な青と目が合う。
私はふいっと拗ねるように口をとがらせて


翡翠「ご心配…痛み入ります…兄上」


刹那、廊下から激しい物音が聞こえる。
なにか異常な気配を察したのか総司と私はそちらの方にかけて行った。


総「……何だろう…ねこの感じ…凄く嫌な予感がするよ」

千鶴の部屋への方へと近づいたとき
…千鶴の叫び声が聞こえた。


翡翠「――千鶴っ…!!!」


総「翡翠っ」


私は急いで千鶴の部屋へと駆け込む…其処に居たのは…。
白髪赤目をした…羅刹隊の隊士だった。
彼はもう自我を失っていた。


「血…血を寄越せぇぇぇぇぇ!!!!」


翡翠「千鶴っ危ないっ…!」


彼は千鶴に再び、剣を振るおうとした。
…この間合いでは抜くのは間に合わない…ならば。
私は千鶴と隊士の間に入る。

ザシュッ

ボタタ…

畳の上に咲く鮮血の花。


翡翠「…苦っ……ち…づる…だいじょ…ぶ…か?」



千鶴「…翡翠さ…ん?」



千鶴の眼には涙が浮かんでいた。
嗚呼、泣かせたいわけではないのに…。



総「…翡翠っ…」



総司に名前を呼ばれた途端、躰の力が一気に抜けて私はそこで意識を失った。




*



【総司side】


赤黒く染まった翡翠の着物。
僕は彼女を抱きかかえた。
騒ぎを聞きつけて、土方さんや一君たちが千鶴ちゃんの部屋に入ってきた。


土方さんたちはその場の現状を見て息をのんでいた。
無論、千鶴ちゃんも保護して羅刹隊士は処分。


ただ…一つ、めんどくさいことが起きてしまった。



伊東「幹部がよってたかって…隊士を殺して…説明しなさい!」



伊東さんが騒ぎを聞きつけてしまい…羅刹の事がばれてしまったのだ。


山南「……申し訳ありません…監督不行届です…」


死んだはずの山南さんが生きていたのだから。
そのあとの伊東さんは何かを決したような顔でその場を立ち去った

山南さんは血の臭いに充てられて…羅刹化してしまいそうになったが…。


左之さんたちが食い止めた。


畳を全て張り替えるため千鶴ちゃんは土方さんの部屋へ行った。


土「…総司…西園寺も俺の部屋に寝かせとけ…此奴の追った傷は…深すぎる。」



翡翠を抱える僕を見て土方さんは悲しそうな表情をした。


総「…分かりました…」


僕は、彼女を土方さんの部屋へと運んだ。
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