時代の遊子

□陸頁目〜和泉守、参戦〜
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麟翔「大体は片付け終えたな…。」


和泉「ちっ……しばらく展示物だったせいか…腕が鈍っちまってるぜ。」


堀川「でも……良かったよ…主に…いや…前の主を一目見れたから」



二人は踵を返して見たそこには敵の残骸で旧幕兵の死体と新政府軍の死体…
それに加えて、今回襲ってきた敵達がごろごろと転がっていた。



…こんな景色だったな…戦というものは。
誰かが死に、誰かが生きる…何のために争うか…それは下らない理由で起こるときもある。


ただ、この函館での戦いは…。
土方の刀…和泉守兼定と堀川国広にとっては…。
心に突き刺さるような、争いだったのだろう。



麟翔「……彼奴らは…もっと、先の時代…。」



和泉守「麟翔大丈夫かお前。」




和泉守に急に声をかけられて、其方の方を向く。
…碧色の瞳はわずかに揺れていた。




麟翔「妾を心配する等と…珍しいこともあるものなのだな…。
主は…見たか?」




和泉「嗚呼…見たさ……途中、斬ってる最中に…目が合っちまった。」




堀川「兼さん……どうだった?」




和泉「…ふっ、相変わらず無茶しやがる……もっと身体大事にしてほしいもんだ…。」





麟翔「土方さんは昔からあんなのだったであろう…。
しかし、彼の運命を変えることは…妾達にはできぬ。」





和泉「ああ、良くも悪くも…歴史は歴史だからな。」





遠く、静かに和泉守が見据えるその先には、幕兵に肩を担がれて
ただ、ただ、黙って立ってこちらをみる土方歳三がいた。




土『…………和泉守、堀川……ありがとな』




静かに、彼はこっちを向いて笑ったような気がした。
そして、和泉守の方に顔を向けてみると
髪の毛は静かに揺られて瞳からは涙がこぼれていた。




堀川「兼さん……?泣いてるよ?」




和泉「うるせぇ……。行くぞ。堀川、麟翔」




緑青色の重厚な門構えの前に白狐のこんの助がいた。



こんの助)お疲れ様でした…。さぁ、行きましょう…次の地へ…。




ギィ、と扉がきしむ音がした、そして…妾達は歩を進めて、時ノ廻廊へ戻った。





陸頁目〜和泉守、参戦〜【完】




漆頁目〜運命分かつ場所〜へ続く
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