祠堂卒業後(未来捏造)
□緑の日々U
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君と一緒に生きていく。
ぼくにはもうなんの迷いもないから。
君がぼくに望む、その全てをかなえられるなんて思っていないけど。
君がぼくを求めるのなら。
ぼくは君のすべてでいたい。
緑の日々U
【託生の歩く道】
春のNYのJFケネディ空港。
飛行機に連結されたボーディングブリッジを渡りながら、ちらりと外を眺める。
初めてここに来たときもこの時期だった。
あれから6年も経つんだなぁ。
もっと長かったような気もするし、逆にもっと短かったような気もする。人間の感覚なんてアテにならない、ってギイが前に言っていたけれど、今になってしみじみとその言葉が実感できるよ。
祠堂を卒業して、日本の音大に進んだ──つまりは、ギイと離れ離れの生活を選んだぼくにとって、大学生活に慣れるまでの日々は、それこそ矢のように過ぎていったのだけれど、自分がこの世界にたった一人取り残されたような夜は、このまま夜明けなんて永遠にこないのではないかと思うほど長かった。
それでも、そんな夜を耐えられたのは、逆説みたいだけれど、ギイ恋しさ故だった。
高3になった春に、共犯者になると約束したあの時から、ギイのために強くなろうと、ぼくは決めたのだ。
ギイが好きだからこそ、ギイに依存するのでなく、ギイと一緒に歩いていくために、強くなるために、頑張れた。
誰に、ではなく、自分自身がギイの隣に立つことを認められるように。
そして、ようやく──。