死神と逃げる月
□全編
67ページ/331ページ
《Q&A・2》
玄関の方で、とんとん、と音がしました。
誰かが訪ねてきたようです。
ナゼナニ女の子は、遊んでいたおはじきをそのままにして玄関に向かいました。
引っ越してきたばかりなので、家の中はダンボールだらけ。
ママもパパも出かけています。
また、とんとん、と誰かがドアをノックしました。
「あなたはだあれ?」
ナゼナニ女の子はドア越しに問いかけます。
「あ、すみません。郵便局の者ですが」
「ユービンキョクさん?」
「こちらの住所にお手紙が届いているんですが、表札が出ていないので念のため確認をと思いまして」
「ユービンキョクさんは、オテガミをくれるひと?」
ナゼナニ女の子が尋ねます。
郵便配達夫の彼はそこでようやく、家の中には小さな女の子しかいないことに気付きました。
「そうだよ。宛先がこのおうちで合っているかどうか、確認したいんだけど」
「まってて」
前の街のお友達からかもしれない。
ナゼナニ女の子はドアを開けます。
「やあ、こんにちは。これなんだけど、お名前合ってるかな」
今度は郵便配達夫の彼が尋ねる番。
その封筒を女の子に見せてみました。
「なんてよむの?」
女の子はまだ漢字が分かりません。
郵便配達夫の彼が代わりに名前を読み上げます。
女の子はガッカリして言いました。
「ちがった」
「あれ、違う?」
「うん、オトモダチからじゃなかった。ママの」
どうやら宛先は合っているようですね。
「じゃあ、ママに渡しておいてね」
郵便配達夫の彼が立ち去ると、ナゼナニ女の子はまたおはじきに没頭しました。
手元に封筒を置きながら、ママの帰りを待っています。