死神と逃げる月
□全編
4ページ/331ページ
《ビリー・ジョン》
奴の名は、ビリー・ジョン。
秘密結社「バックギャモン」が生み出した、恐ろしい怪物だ。
「やい、ビリー・ジョン。今日こそは正体を暴いてやるぞ」
僕がそう言うとビリー・ジョンは、寝そべったまま耳を立てた。
普段はゴールデンレトリバーの姿をしているが、僕は知っているんだ。
「たん!たーん!それビームだぞ!」
雪の降ったあの日、奴は体じゅう真っ白の「雪おおかみ」に変身したんだ。
恐ろしい怪物から平和な街を守るため、マントとリコーダーでそらゆけ小さなヒーロー。
「たーん!た……」
「BOW!!」
まずい、一時退却だ。
無理はしないのがヒーローの掟。
何故ならヒーローは簡単に負ける訳にはいかないからだ。
「ようし、新しい作戦が必要だな。それかもっと強い武器を調達してこよう」
するとビリー・ジョンは家の方を見て尻尾を振り始めた。
これは秘密結社の人間がビリー・ジョンの様子を見に出てくる合図だ。
続きはまた明日、学校が終わってからにしよう。
僕は物陰に隠れながら、その場を離れた。
「ほら、ハナ。散歩に行くよ」
秘密結社の人間が奴を連れて行く。
奴の名はビリー・ジョン。
恐ろしい怪物、ビリー・ジョン。