死神と逃げる月

□全編
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《空き缶・2》




ガランガラン。




ガランガラン。




早朝の街に、響く音。




そのたびゴールデンレトリバーのハナは、耳を塞ぎたくなる。




この音は空き缶の音。




よく駅前の公園にいるおじさんが、ごみ集積所から空き缶を取り出す音。




いいのとダメなのがあるらしく、全部は持っていかない。




「近頃はアルミも安いからな。小遣い稼ぎにしかならない」




ブツブツと何かを言いながら、空き缶を選り分けていき




その後は必ず、散らかっていたゴミを綺麗に片付ける。




そしてまた別の集積所に立ち寄り




ガランガラン。




ガランガラン。




「…BOW!」




だんだん耳障りになってきて、ハナは一声文句をつけた。




「おお、お前か。朝から元気のいいやつだな」




吠えられたのに、嬉しそう。




寂しがり屋なのかしら。




ハナは拍子抜けしてしまって、お好きになさいと大あくび。




「家があるってのは、いいことよなあ」




ハナの犬小屋を見て男はしみじみと呟いた。




「帰る場所があるってだけでな、それだけで強く生きていけるもんだぜ」




そういうものなんだろうか。




ハナは青く透き通った空を見上げて溜め息を吐いた。




なら早く、可愛いあの子も帰って来ないかしら。




帰る場所はここにあるのだけど。
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