死神と逃げる月

□全編
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《緑》




始まりを探す彼女は目を覚ますと




真っ先にそれに気が付いた。




切らしてしまったはずの、緑色の重たい煙が出る煙草の葉。




テーブルの上にそれが置かれている。




しばらく彼女は、眠りの世界と現実との区別がつかず




まだ寝惚けているのかと、自分に呆れ加減でいたのだが




どうやらそれが現実に目の前に置かれていると分かると




辺りを警戒しながらも、「おお」と声を上げて喜んだ。




何せお気に入りの煙草だ。




しかし一体誰が。




そう言えば、先ほどまで夢を見ていた。




うまく思い出せないが、その中で誰かと会っていたように思う。




煙草を置いて行ったのも、その人物か。




そんなふうに考える彼女は、やはりまだ少し寝惚けているらしい。




それもそのはず、寝る前に引っくり返した砂時計を見れば




まだ2割ほどの砂が落ちずに残っている。




いつもより幾分早く起きてしまったようだ。




もう一度、ゆっくりと瞼を閉じる。




次に目が覚めた時には、煙管を一服飲もうじゃないか。




想像していると、胸の辺りがじんと温かくなる。




この煙草の葉には心を落ち着かせる作用があるのかもしれない。




誰だか知らないが、このところの不安に苛まれる彼女を見かねて




恐らく譲ってくれた者がいるのだ。




一体この部屋の外には誰がいるのだろう。




どんな世界が広がっているのだろう。
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