死神と逃げる月
□全編
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《今日だけなんだから》
ハナは憤慨していた。
ええそうよ、いつものことだもの。
分かっているわ。
だけど、すぐ戻ってくるって言ったじゃない。
郵便局に入ったきり、何分待たせたと思っているの。
春になったと言っても、まだまだ風は冷たいんだから。
まあ見知らぬお姉さまが相手してくれたから、寂しくはなかったけれど。
「どうしたの、ハナ」
アタシの不機嫌に、ようやく気付いたみたいね。
だけど今日という今日は、アナタの嘘吐きを許してやんないわ。
帰り道は一度もアナタの顔を見ないって決めたの。
今日こそ寂しがればいいんだわ。
「そうだ。ハナ、明日は学校休みだから河原にでも遊びに行こうね」
「…BOW!」
そうね、今日はエイプリルフールだから許してあげるわ。
今日だけ。
今日だけなんだから。