死神と逃げる月

□全編
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《ヒーローの仕事》




ヒーローの仕事は、悪と闘うばかりじゃない。




例えば道に落ちている空き缶。




誰かが踏んづけて、転んで怪我でもしたら大変だ。




だからくずかごを探して入れるんだけど、もちろんヒーローだから普通には入れない。




三歩下がった場所から格好よく投げて入れるのだ。




「行くぞ!たーん!」




大丈夫。
入らなかった時のこともちゃんと考えてある。




跳ね返る方向を予測して、すかさず拾い




無理な体勢から格好よく投げて入れるのだ。




一発で入るよりも、こっちの方が断然格好いいと思っている。




「これでどうだ!たーん!」




今日は三回まで投げていいことに決めた。




もう一度拾おうとした時、僕は別の仕事を見つけた。




交差点を、お婆さんが渡ろうとしている。




周りは塀に囲まれて見通しが悪いし、信号のない交差点だから危険だ。




僕は空き缶を一旦くずかごの脇に置く。
後できちんと、格好よく投げて入れるのだ。




それからお婆さんを呼び止めると、先に行って安全を確認してからお婆さんの手を引いてあげた。




「ありがとう。坊や偉いんだね。何年生だい」




「僕はヒーローだから、名乗ったり自分のことは明かせないんだ」




ヒーローには秘密が大事だ。




「だけどお婆さんには特別に教えます。四年生です」




そしてヒーローには礼儀も大事なのだ。
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