死神と逃げる月

□全編
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《Q&A・3》




11月に入り、乾いた空気がだんだんと冬の気配を感じさせる。




嘘吐きな彼女は新しく買ってもらったコートを着込み、郵便局の角を曲がった。




今日、暢気な彼が風邪をひいて学校を休んだのでお見舞いに行くのだ。




大事な受験も控えている。
体調管理には気をつけないと。




これからのことを考えながらイチョウ並木の坂を下る。




その途中、彼女は小さな女の子を見つけた。




「どうしたの?」




難しい顔でイチョウの木を見上げているから、風船でも引っかかっているのかと彼女も見上げた。




しかし木の上には何も見えない。




「何か困ってるのかな?」




しゃがんで話しかけると女の子は、木を見上げたまま訊いてきた。




「どうしてアキになると、はっぱがキイロくなったりアカくなるの?」




ああ、そういうこと。




この子は好奇心旺盛な、ナゼナニ女の子。




嘘吐きな彼女は少し考えてから、女の子の胸に留めてある赤い名札を指差してこう言った。




「あなた、幼稚園の年長さんでしょ」




そこでようやく振り向いた女の子は、林檎のように真っ赤な頬っぺをしていた。




「あそこの幼稚園、私も通ってたんだ。名札の色がね、年少さんは緑、年中さんは黄色、年長さんになると赤になるの」




ナゼナニ女の子は頷く。




「それと同じでね、葉っぱも秋になると進級して黄色や赤に変わるんだよ」




もちろんそれは、彼女のお決まりの嘘。




だけどナゼナニ女の子はそのまま信じたみたい。




嘘吐きな彼女の顔をじっと見つめて、驚きと納得の中間のような顔を浮かべる。




そして一言。




「はっぱもシンチューしてアカくなる」




そうそう偉いね、と嘘吐きな彼女は女の子を褒めてあげた。




「じゃあ、わたしの方がオネエサンね」




最後にそう言った女の子。




すぐには意味が分からなかったけど、女の子と別れてしばらくしてから彼女は気付いた。




赤い名札の自分と黄色い葉っぱのイチョウ。




年長さんと、年中さん。




ああ、そういうこと。
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