silver soul 3
□真夏のベンチ、かさなる影
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嫌でも汗が垂れ流れ、ミンミンと蝉がやかましく鳴いている。
夏休み真っ盛りだった。
なのに俺は学校に来ている。何でも授業中の居眠りが原因で補習とのこと。ちなみにもう1人女子がいた。こちらは居眠りではなく学力不足である。
文句を言いながらだらだらと補習を受ければ時間はあっという間に過ぎていった。
さあ帰るかと自転車に跨がり学校を出ようとすると補習を受けてヘロヘロになったチャイナに足止めされる。
「ちょっと待つアル…。1人だけ抜け駆けして自転車で帰るなんてズルいネ」
「何言ってンでィ。これは俺の自転車ですぜ。チャイナに文句言われる筋合いはねェな」
「こんないたいけな少女が熱中症でヘロヘロしてるのに助けてくれないなんて最低アル」
「いたいけな少女なんて見当たらねーな」
「私のことアル!!」
良く見れば顔は真っ赤で息も上がっていた。熱中症とまではいかなくてもしんどいのは確かだろう。
「いつも乗ってた犬はどうしたんでィ」
「定春は熱中症でぐったりしてるネ。かわいそうだから留守番してる」
「…貸し1だからな。後ろ乗りな」
「キャッホー!!ちょっと見直したアル」
「だいぶの間違いだろィ」
自転車に乗ったところで暑さが変わるわけでもなくじりじりと太陽は照りつけ汗だくになった。
チャイナの息も荒いままでこのままだと良くない気がした。
「チャイナ、少し休まねーか」
「日陰に行きたいアル」
途中で公園に寄ることにした。ちょうどベンチが日陰にあったのでチャイナを座らせ、自分はコンビニに行くことにした。
「ほれ、アイス」
チャイナにアイスを渡し、隣に腰かける。
「おごりアルか?」
「どーせ金持ってないンだろ?」
「神威全然お小遣いくれないネ」
チャイナは実兄と2人で暮らしているらしい。
「しょうがねーからおごる」
「なんか今日優しいアルな。ありがとう。おっ、バリバリ君ソーダ味ネ」
「!」
チャイナにお礼を言われるなんて思ってもみなかった。照れ隠しのために自分もアイスを頬張る。
「あっ、ズルいアル。私のはバリバリ君(60円)なのに自分だけ破亜限堕津(250円)アルか」
「誰の金だと思ってんでィ。それにしても暑ィや」
空を見上げれば雲1つない。太陽も相変わらず照りつけていた。
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