星船-hoshifune-

□第1話 ジャンヌの涙
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白。
どこまでも続くのは真っ白な雪景色。 建物や植物は全て雪に覆われ隠れており、その景色は綺麗というよりはどこか寂しげな印象を受ける。

その一角、寂れた村のはずれにある墓地の中心、そこには枯れかかった樹木に寄りかかるように座る少年の姿が見えた。
少年はこの凍りつくような寒さの中、身にまとっているものはただのボロ布一枚。
しかし不思議と体は震えておらず、纏う雰囲気は何者も自身に近づかせないような強い警戒心に満ちた物。
長く伸びきった黒い髪の間からは意志の強い此方もまた黒い瞳が伺え、体中には生傷が残り少年が今までどんな扱いを受けてきたのかは一目瞭然である。
少年の周りには生き物の気配がなくとても静かだった。
唯一聞こえるのは彼の静かな呼吸の音だけ。

一体どれほどの時間が経ったのだろうか。
空からは白い粉雪が降ってきており、少年の頭を少しずつ黒から真っ白に染めていく。
ふと少年の視界にある男の姿が映った。
男は真っ直ぐに少年の元へと歩いてくる。
それに伴い少年は男を警戒するように睨みつけ、同時に細い腕で自身が纏うボロ布を握りしめた。

暫くすると男は少年の目の前で立ち止まる。男は全身に黒い服を身につけ、白い肌が覗く右手に煙草を持っている。
薄い唇からはたった今煙草の紫煙が吐き出された所。

男は少年をそっと見遣り口を開く。
感情の窺えない冷たい瞳の男が告げたのは少年の予想を大きく裏切る言葉だった。

「俺と来ないか。」

男はそう一言告げ、少年に手を差し伸べた。
 

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