小説(パラレル)
□夢現の花
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この世の者は、少し上手いことや褒め称え、あるいは優しくすればすぐに手中に転がり落ちる。
あとは、意のまま。
とある村の守り神は力はあったが、
恋愛関係にはだらしなかった。
相手は日替わり。
飽きれば捨てる。
そんな彼だったが、神たちはこぞってかれに集まった。
兄神は、彼を叱るが一向に効き目はない。
そんな折だ。
守り神に、美しい異国人が生け贄としてやってきたのは。
◇◇◇◇◇
しゃらん、と音。
鈴の軽やかな音。
そういえば付近の村には雨がふっていなかった。
村の長から近々生け贄をささげるとあったから、それかもしれない。
深紅の目の黒髪の男は、だるそうに髪をかきあげた。
見た目は人間だが、頭の上には小さい角がついている。
首には水晶や翡翠の勾玉の首飾りがかけられていた。
「雨を降らせてくれってか」
遠くの村に美しい神がいると聞いて会いにいった。
その間、村を疎かにしてしまっていた。
男は、少し唸る。
守り神の責は果たさなければならない。
「…まぁ、好みでなけりゃ帰すか」
男は、立ち上がる。
彼の名は黒鋼。
恋愛関係にはだらしない、けれど力はもった村の守り神、竜神だった。
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