俺とボクの道標

□俺と彼女とオルゴーの鎧
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 カルベローナを後にした俺達は現実世界に戻ると、マーメイドハープを利用してトルッカの西を目指していた。


 ブボール様の死と同時に目覚めたカルベ老夫婦から、かつて空飛ぶじゅうたんを作ったことがあると聞いたからだ。
 それはいま、どこかに行ってしまったが、おしゃれな金持ちが持っているかもしれないとの話だった。


 たどり着いた場所は、ポルテの館。大金持ちカルバン・ジャンポルテの別荘だ。

 ここでは「ベストドレッサーコンテスト」と言って、おしゃれの度合いを競い合う、ちょっと変わった催しが開かれていた。
 そのランク3の優勝賞品が、俺達が目指すものだった。


 ランクによって男性や女性限定に加えて、魔物限定まであるが、最下位のランク1から順調に勝ち上がって来た。

 そしていよいよランク3となったわけだが、今回は決まっていないので、誰が出場するかでもめた。
 ハッサンやアモスまで大張り切りだったが、正直な話、この二人のセンスは怪しい。

 アモスはしっかり着こなせば見栄えはするだろうけど、ハッサンは「ステテコパンツこそ、男の美学だ!!」と言い張って、聞かないんだもんな。

 ランク2の男性限定に絶対出ると喚いていたのを、どうにかして説き伏せたが、おそらくランク1でも無理だろう。
 まして今回は何としても勝たないといけないので、女性に任せることにした。

 俺個人としてはバーバラが良かったが、結局ミレーユに決まった。
 じゃんけんで勝負したというのもあるが、バーバラは……。


 いまのミレーユは魔法戦士とは言え、元々がずば抜けているものだから、コンテストでは注目の的だった。

 どの衣装で出場するかは相談して決めたはずなのに、スポットライトに照らされながら歩くミレーユは本当にきれいで、神話に出てくる女神様のようだった。
 誰もが見とれていて、俺達も例外ではなく、チャモロまでもが呆然としながら見つめていた。

 当然、優勝はダントツでミレーユ。
 おかげで「きれいなじゅうたん」を手に入れた俺達は、再びカルベローナに戻ってカルベ老人に託した。
 すると、じゅうたんは本来の姿を取り戻し、空飛ぶ魔法のじゅうたんになったってわけだ。

 
 再度現実世界に戻った俺達は、じゅうたんの力を使い、伝説の鎧があるとされるマウントスノーの南へと向かった。

 大きな湖のほとりに、かろうじて残る礎。
 察するに、ここにはかつて、一つの城があったのだとわかる。

 ……それにしても何だろう、この気持ち。さっきから、誰かに呼ばれている気がする。

 「何かあるわね。ここ」
 「はい。先程から感じますね。僕達を呼ぶ声が」
 「ええ!? やだなあ! あたし、そういうのキライなのに」

 ミレーユ、チャモロも同じ思いを感じたらしい。バーバラに至っては、ずっと俺の手を握って離さないし。仲間の前では絶対にしなかったのに。


 近くの井戸に飛び込んだ俺達を待っていたのは、美しく復活したグレイス城で行われた一つの儀式だった。

 大魔王の魔の手から城と伝説の鎧を守る為に、悪魔ダークドレアムの力を得ようとした人々。
 
 結果、もたらされたのは、惨劇だった。
 一部を除きダークドレアムの手にかかったんだ。
 過去の出来事だとわかっているが、何も出来ない俺達の前で、次々と犠牲になっていった。


 元の世界に戻って来た俺達は、廃墟に隠された地下室に向かった。
 そこに眠っていたのが、オルゴーの鎧だった。一人の兵士長の決死の覚悟と共に、ずっと待っていたんだ。


 ……遅くなってごめんな。




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