俺とボクの道標

□俺と彼女と誕生日
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 現実世界のクリアベール。
 
 ここでは、少年ジョンを亡くしたハリス夫妻の願いを叶える為、北に位置する運命の壁に挑んだ。


 見たこともない断崖絶壁で、大勢がゾロゾロ行くような場所じゃなかった。
 やむなくパーティーを分けて、俺とバーバラ、それにアモス、ミレーユにしたけど。
 よりによってアモスのヤツ、最後尾を歩きたいと言ってきた。

 ただでさえ、ミレーユがいることでバーバラと離れざるを得ない俺に向かって、そんなことを言うなんて!
 
 なぜって、普段からバーバラはスカートを履いているわけで、つまりアモスは……。
 いい度胸してやがるよ、全く!!
 
 これは、ミレーユの一言で回避されたけど。

 「ミレーユさん、ベホイミお願いします!」
 「アモスはホイミ使えるだろが!!」
 「私のホイミじゃ、回復する前に魔法力が尽きてしまいます!」
 「仕方ないわね。はい……ベホイミ!」
 「ああ、ありがとうございますミレーユさん!! あなたはまるで天使だ! 女神様だ!!」
 「まあ。アモスったら!」
 「アーモースー! 明日からルイーダ決定な!」
 「そんなー! 勘弁して下さいよ!!」
 「いいから早く進もうよ。あたし、疲れたわ」

 勇気のかけらを手に入れた俺達は、クリアベールに戻った。

 冷静になった俺は、アモスのルイーダ送りをやめた。
 何と言っても、明日は俺の誕生日! こんなくだらないことで、余計な時間を使いたくない。


 その夜はハリスさんの好意で、ジョン君のベッドを使わせてもらったんだけど、次の朝、気が付いた時にはベッドで空を飛んでいた。
 有り得ないことが起きていたんだ!!

 夢の中でジョン君が「このベッド、お兄ちゃんにあげるね!」と言っていたが、いつの間にか夢の世界に移動してたんだ。
 この記念すべき日の幕開けにふさわしいことをしてくれるなんて、ジョン君も子供のくせに、なかなかやるよ! どこかの誰かさんとは大違いだ!


 ――――……

 仲間の誕生日は必ず祝うことにしている俺達。今日も例外じゃなかった。
 宿の一室を借りてパーティーをした後、俺はバーバラと二人きりになった。

 実は、プレゼントはいらないから二人だけにして欲しいと願っていたからだ。
 ミレーユには最後まで反対されたけど、誕生日という言葉を操って、了解にこじつけた。


 全員が一斉に消えるとおかしいので、違和感無い状態で一人、また一人と消えて行き……。

 そして気が付いた時は、この状態だったというわけだ。
 最初はバーバラも探しに行くと言ってきかなかったけど、そこは無論、説き伏せた。

 「なあ。今日は俺の誕生日だよ? 一緒にいてくれたって、いいじゃないか」
 「そうだけど、みんな、どこに行ったのかな……。あ、そういえばあたし、まだプレゼント渡してなかったね。ごめんね」

 しばらく落ち着かなかったバーバラは、急に思い出したように言った。
 ……あのー、俺は一応、君の彼氏なんだけど。

 「プレゼントは決まってるじゃないか、バーバラ!」
 「決まってるって、どういうこと? 今から言われても困るんだけど」
 「大丈夫。すぐに済むから」

 せっかくの誕生日に、大好きな彼女と二人きり。何も感じないほど、俺はおかしくない。一応健全な男で、青春真っ只中ってやつなんだ。
 だから、願いを口にしたんだけど。

 「やっ……やだ。絶対にイヤ! もう! 何でそんなこと言うの!? 信じられないよ! レックなんか知らない!!」

 ……全力で断られた。

 ここに来た時なんか、俺との旅が楽しいと言ってたし、装備がカッコいいかって、相槌求めてきたほどなのに。

 まあ、それもそうなのかなあ。旅をしてるんだし、仕方がないのかなあ。
 だけど、ここまで拒否しなくてもいいような気が……って、そんなのはどうでも良かったんだ!
 
 その後、俺は散々謝って、やっと許してもらえた。
 

 そして翌朝。
 ハッサンやアモスから散々聞かれるはめになるところまでは、考えていなかった。

 最悪な幕開けだ!

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