長編2
□第一章:出会い再び……
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魔法都市カルベローナに朝が来た。
空からゆっくりと、光の粒が舞い降りてくるこの神秘的な都市は、他の町では見られない独特の景観がある。
片隅では、小鳥たちが目覚めの歌を歌い、犬や猫は、周囲のすがすがしさを身体中で表現するかのように飛び回っている。
こんな、ごく当たり前の光景が、ここではまるで絵に描いたように美しいのだ。
町のあちらこちらでは、朝の挨拶を交わす者、朝食の準備に追われる者、学校へ行く支度をしている子供達等がいる。
この、何気ない日常生活の始まりは、カルベローナにも当たり前のようにやって来る。しかし、他で暮らす人々とは明らかに雰囲気が異なっている。
それは、全ての住人が魔法を使えるせいなのか。あるいは、大海に浮かぶ孤島にあるので、独自の発展を遂げ、文化を持っているせいなのか。
ともかく、ここカルベローナでも、いたる所で一日の生活が始まりろうとしていた。
この輝きの中で町の長をつとめるバーバラは、自室で考え事をしていた。
――――……
ここは夢世界。
現実世界に住む人々の、夢や希望が集まって生まれた場所。言ってみれば、精神エネルギーの集まりみたいなものだ。
夢と言っても、眠った時に見るものとは種類が異なる。どちらかと言えば憧れに近い。
しかし、ごく普通の日常生活があり、確かな生命活動が行われている。それは、現実世界となんら、変わりのないものだ。
バーバラは、ここの住人の一人である。
彼女は以前、ふとした事から現実世界に紛れ込んだ。そこで、当時はまだこちら側の住人だった、レイドック王子をはじめとする仲間達と出会った。
そして、苦楽を共にしながら夢と現実、両方の世界を行ったり来たりすることとなった。
一つの世界に問題が起きれば、大きく影響し合っている他方の世界にも、何らかの障害が出てくるからだ。
その為に、随分と振り回されたものだったが……。
結果、四人の魔王(ムドー、ジャミラス、グラコス、デュラン)と、悪の総本山であった大魔王デスタムーアを、苦心の末打ち倒した。
そのおかげで、両方の世界に無事、平和がもたらされたのである。
だが、必ずしも喜ばしいことばかりではなかった。
デスタムーアは、夢世界と現実世界の両方を、自らが創造した狭間の世界に飲み込ませてしまうつもりだったのだ。
よって、本来ならば目に見えないはずの夢世界を、魔力によって実体化させていた。
つまり、デスタムーアが滅びてしまえば、夢世界と現実世界をつなぐ通路が途絶えることを意味していたのだ。
これにより、ただ一人、夢世界の住人であったバーバラは、現実側との別れを余儀なくされた。
大切な仲間と離れ離れになることは、彼女にとって身を引き裂かれる思いだった。
それから数ヶ月後。
夢世界を束ねるゼニス王の拠点、クラウド城で保管されている、未来が入った卵が孵る瞬間がやって来た。
その時、現実世界の仲間達は、ミレーユの夢占いを通じて見ていた。つながりは、完全に途絶えてしまったわけではなかったのだ。
これが理解出来た時、二度と会えなくても共にあるのだと、お互いの認識を深め合ったのだった。