社長

□エンキョリレンアイ
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「顕ちゃん?」
「本気なんだ。君と社長が付き合い始めるずっとずっと前から。だから家も近くにしたし、他の女には絶対しないくらい優しくした。好きだから。」
「でも、私、鈴井さんが、」
「うん。わかってる。俺はあの人には敵わないんだよな?わかってるけど、昨日弱ってる権兵衛を見て、我慢出来なくて、社長怒らせる覚悟で言ったんだよ。」

「顕ちゃん……」

「だからと言って、あの人から奪おうなんて思っていないよ?けどね、あの人に会いたくて寂しくて苦しい夜とか、あの人にうんざりしたときとかは、権兵衛には俺が居るから。それだけは忘れないで。もし万が一、あの人に傷付けられたら、俺がなんでもしてあげるし、権兵衛が望むなら、あの人の代わりだってするから。」
「そんな、顕ちゃんを都合の良い男の1人みたいに」
「都合の良い男でいいから。だから、権兵衛の心に俺の場所をちょうだい?」
「……私、鈴井さん、探してくるから。……顕ちゃんのこと、そんな風に、思えない、思いたくない。」
「権兵衛!」
「だから!!……私が鈴井さんにフラレたら、私のこと馬鹿な女だって笑って?」


私はそのまま部屋を飛び出して、鈴井さんの姿を探した。走って走って走って、転びそうになりながら、探した。


ようやく見つけたのは、公園のブランコに座って、肩を丸めたカッコ悪い後ろ姿。けれど、愛しくて仕方がない背中。


「鈴井さん!」


「……遅いよ。」

来ることはわかっていた、という口振りだけど、本当は不安で不安で仕方なかったという顔をしていた。

「権兵衛ちゃん、俺のことどう思ってるの?」
「好きだよ」
「僕は愛してるんだ。」
「鈴井さん、」
「だから君の代わりなんていない。」
「わかってるよ」
「君から電話が来たときの僕の気持ち、わかるかい?」
「……」
「声を聞くだけで愛しくて切なくて、けど君の可愛い顔は見れない。声を聞くだけでわかるくらい弱ってる。けど僕はすぐに君を抱き締めてあげることさえ出来なくて、もどかしくて。」

「こんなに弱りきってしまうまで僕を頼ってくれなかったのかとか、いったい誰が権兵衛をこんな風にしたのかっていう怒りとか、それが自分のせいでもあるとか」

「もっと話していたいのに僕に気を使って電話を切ってしまった昨日の君とか、不安で押し潰されそうだった」

「鈴井さん……」
「それで、朝一の飛行機に乗って、Amuseに顔を出したら今日は休みだって言うし、ああそんなに溜め込んでいたのかって、タクシーで権兵衛のマンションに向かったんだ。」
「、」
「そしたら、君の部屋には男が居た。それも、僕の部下にあたる安田顕。君に思いを告げた顕ちゃんを、権兵衛ちゃんはかばう。すぐに追いかけて来てくれると思っていたのに全然来ない。」
「鈴井さ「顕ちゃんのことは名前で呼ぶのに僕は苗字にさん付けだ!……君と付き合ってるのは、顕ちゃんなのか?」
「そんなこと、」
「やっぱり、俺なんかとよりは年齢も離れていないし、そりゃ50間近のおっさんよりは良いだろうけど」
「だから私は」
「けど僕は、権兵衛を愛してる。」
「!?」
「愛してるんだ……だから、」
「だから?」
「本当は嫌だけど、権兵衛が望むのなら、別れてあげるよ」
「別れ……えっ!?」
「遠くて年老いた僕より、近くにいて、若い顕ちゃんの方が」



「いい加減にしてください!」


思わず、叫んでいた。

「私は、鈴井さんに会いたくて寂しくて、電話したんです。それで、夜中に顕ちゃんが来たとき、鈴井さんが来てくれたんじゃないかって嬉しくて、飛び付いて、けどいたのは顕ちゃんで、顕ちゃんは気を使って私に考えないようにさせてくれて、やけ酒したから飲み過ぎて寝坊して、顕ちゃんがうまく言ってくれたから休みをもらえて、本当に、それだけです!こんなに迷惑かけて、お世話を焼いてくれた顕ちゃんをかばわなくて、いったい誰をかばうんですか!?年齢なんて、いつもいつも私があまりに子どもっぽくて、なんとか鈴井さんに追い付こうと必死なのが、わからないんですか!?遠くて会えないからって、浮気をするような女だとでも思ってるんですか!?」


「権兵衛ちゃ「こんなに好きなのに、なんでわかってくれないのよぉぉぉ!」

無様に泣き崩れた私の肩をそっと支えて、鈴井さんは強く強く優しく、抱き締めてくれた。

「うぅ〜」
「権兵衛ちゃん泣かないで〜」
「鈴井さんの馬鹿ぁー」
「うんうん、ごめんね、」
「鈴井さん好きぃ、大好きぃ〜」
「うん僕も好……」
「……鈴井さん?」
「さっき、さぁ、権兵衛ちゃん、顕ちゃんに飛び付いてって言った?」
「……」
「飛び付いたんだね?」
「えっと、はい……」
「よし、とりあえず君の部屋に戻って、顕ちゃんに雷を落とそう。」
「え、鈴井さん待って」
「僕のものに手を出すな、ってね♪」
「ねぇ鈴井さん笑ってるけど目が恐いんですけど!!」
「え〜そうかなぁ?」
「あの、本当に顕ちゃんのことは」
「じゃあ権兵衛ちゃん、僕の命令1つ聞いて?」
「聞きます聞きます、聞きますから!」

「僕を名前で呼んで」


「……」
「さぁほら、はやくはやく。」
「……ぁ……くん」
「んー?聞こえないなぁ、こりゃ顕ちゃんは大目玉だ」
「たーくん!」
「よくできました♪」


パアッと明るくなった顔で、鈴井さんは私の手を引いて歩き始めた。


「もう我慢、しないで。」
「?」
「権兵衛ちゃんが会いたいって思ってる数倍、僕は君に会いたいんだから、君の気持ち、ちゃんと伝えて。」
「はい……」
「聞き分け悪くていいから。会えなきゃやだって駄々をこねていいから。」
「はい……」
「そんなことで、僕は君を嫌ったりしないから。」
「はい……」


「聞き分けの良い女なんかにならないで」






_ ̄_ ̄_ ̄_ ̄_

途中で、自分が何をしたかったのか見失い、終点がわからなくなってこんな長々ダラダラ……

ジャンピング土下座orz≡3≡3


2011/05/30/0:19
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