A Novel

□RO○KIESネタ
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まぁ麻雀よりはましか…。俺は目の前に差し出された割りばしを握りながら、そんな事を考えた。



*王様ゲーム*



ジメジメとした梅雨時、これから訪れる夏に向けて水を貯める季節がまたやってきた。

今まで嫌って程毎日が晴れていたのに、梅雨になると一気に曇って毎日毎日雨がふる。そうなると大事な部活の時間も奪われるわけで、今日も部活の雨天中止を告げる校内放送がながれた。


「麻雀…」


誰かが学ランに着替えながら部室で呟く。


「あ〜…バッティングセンターでも寄って帰ろっかにゃ〜」


また誰かが呟やく。


部活が中止になった日はいつもこんな感じで皆暇で暇でしょうがないという顔をする。

当たり前か…部活が無いと本当に暇なのだから。


「なあなあ、麻雀も無いし王様ゲームでもやらない」

子供じみた提案をしたのは湯船だった。



**********


「にゃー!じゃあ一番が三番に空手チョップ!」


元気よく命令した湯船は本当に楽しそうだ。

でも命令さるた側はたまったもんじゃないんだよな〜王様ゲームって。

俺はどこか冷めた目で命令実行を見ていた。

どうやら一番が桧山で三番が平塚だったらしい、ゴチッと鈍い音がした後平塚は床に突っ伏して動かなくなっていた。


「は〜い次々…いっせーのー…」


せっ!


平塚を放置したまま6回目…今度は若菜が王様になった。


「…う〜ん…どうすっかなぁ〜何か皆が嫌がる事がいいよなぁ…」


暴力的な命令ばかりだったから次は王様ゲームらしい罰にした方が面白い…若菜は手を顎にやり思案している。


「王様ゲームの定番って言ったらキスだろキス」


そこに割り込んだのは興味なさそうにゲームに参加していた安仁屋だった。


「テメーらの考える命令はぬるいんだよ…」


安仁屋は割りばしを器用にクルクル回しながら若菜にそれでやってみろと言った。だが当の若菜はウゲッとした顔をしたまま安仁屋を睨んでいる。


「男同士でキスかよ〜」


「俺…こんなむさい野郎共としたくね〜…」


「ああ…まったくだ」


命令がキスに決まったとたんニコガク野球部にどんよりとした空気がながれた。
もともと不良だった自分たちには暴力的な命令の方が受け入れやすかったらしい。

…俺はどっちにしろ嫌だけど…。



「しゃ〜ね〜な〜、まっ俺の身の安全は保証されてるし、じゃいくぞ」


若菜の「いくぞ…」に皆、自分にくるな自分に当たるな…と祈りだす。俺も坊さんになったかのように一心不乱に念じだした。


「二番と七番がキッスぅ!」


「「ぎぇぇぇぇぇっ!」」

「おっ、御子柴と安仁屋じゃん…」


岡田がクールに指差しながら二人の名前を挙げた瞬間、俺と安仁屋は半笑いになった顔を見合わせアハハッ…と苦笑した。


「おし!男ならぶちゅーっといけ!」


「えっ…マジで俺?本当にしなきゃダメ」


「くそー自分で提案たのがバカだった…」


二人揃ってブツブツ呟く姿に部員一同は腹をかかえて笑った。中でも一番笑っているのが若菜…写真撮っといてやろーか?とか、何とかちゃかし立ててくる。


「おい、とっととやらねーとディープキスに命令変更するぜ」


「平塚!お前関係ねーだろ!気絶してたやつがよぉ」

「フハハハッじゃあとっととキッスしろ!」


「いやキッスとか言う!気持ちわるい」


安仁屋はなんだかんだでキス慣れしているからなぁ…俺が一番居たたまれない気がする。

ヤバイ緊張してきた。

「おい御子柴」


「うえっ!」


上を向くと安仁屋の顔があったから変な声を出してしまった。自分より約30センチは身長が高い安仁屋は眉をしかめて怖い顔をしている。


「あ…安仁や!!」


いきなり顔をガシッと片手で捕まれて俺はビックリして目を白黒させた。

い…痛い…顔が痛い…。

何も片手で掴まなくてもいいだろ…とか思っていたら安仁屋の顔がだんだん近寄ってきた。


うわー逃げられない!


「おーーーー!」×7


おーじゃねーよ!


俺は内心怒りを覚えながらも今は唇にくる衝撃に備えて身構えるしかなかった。


…そして



「…………」


「…………」



安仁屋の唇は軽く俺の唇に触れて離れていった。


こ…これがキスなのか…。

俺は初めてしたキスに…こんなもんなのか?とキョトンとしたまま考えた。


「ぐはっ…見たか男の生きざまを!」


「いや、生きざまって何だよ。だいたい安仁屋、お前キスくらい当たり前だろ」

「そーだ安仁屋!セックスだって朝飯前なくせに!」

キスし終わった後の部室はいつものようにうるさかった。

安仁屋は皆にこづかれ、過去の女関係を若菜に暴露されたりしていた。


「おい、御子柴?」


「あ、何関川…」


ボーッと皆を眺めていたら関川に呼ばれた。だから振り返ってやったら関川は俺を心配そうな顔で…………、見ているわけもなく、ニヤニヤしながら背中を叩いてきた。


「痛!何すんだよ関川」


「いいもん見せてもらったわギャハハハハ!」


「せ…関川もかよ」


友達だったら少しは哀れんでくれたっていいのにさー…。


そして再び俺は、ため息をつきながら王様ゲームの棒を引いた。





END
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