A Novel
□APH
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ピーターが出てきますが、ピーター自身はシー君と呼んでいます。
*世話焼き
「君はピーターを甘やかし過ぎなんだぞ」
プライベートでイギリスを訪れていたアルフレッドは久しぶりに来たアーサーの自宅でプンスカ怒っていた。
いつも勝手に来て、勝手に客室を使って、勝手に冷蔵庫やお菓子の棚をあさってるアルフレッドに怒る資格があるのかよ…とアーサーはギロリとアルフレッドを睨みつけた。
「お前…食べカス落としながら何言ってんだよ。つーか甘やかしてねーし」
不味い不味いと言いながらもスコーンをバクバク食べやがって、大体それはピーターのなのに。
元弟で、今や世界の覇権を握っているアルフレッドに俺が誰に何をしようと関係無いだろ!と怒るもアルフレッドはお構い無しにソファーで昼寝をするピーターの頬をビシビシ突きまくる。
「バカ…起きちまうだろ」
止める声も虚しくアーサーそっくりの眉毛が少し中央に寄りピーターは目を薄らと開いてしまった。
「あーあ…」
国としては認めていないが自分に似た容姿をしたピーターが本心では可愛いアーサー、静かに眠っていたのに…と肩を落としてガッカリする。
「シー君寝ちまってたですか?」
目をゴシゴシ擦りながらアーサーのズボンを引っ張るピーターは抱き締めたい程可愛い…が…そこはこらえてアーサーは努めて冷静に対応した。
「お前なぁ、人んちで寝るなよ。お前が寝てる間にスコーンはコイツの胃袋の中だ」
ジロッとアルフレッドを見ると「あー不味かった」と満面の笑みを浮かべて腹を叩いている。まるでピーターに見せ付けるように。
「あー!!シー君の!」
「君が寝てるのが悪いんだぞ、早くあの鉄の塊の家に帰りなよ」
「なんて事言いやがるですか!このアメリカ野郎」
「ハハハハハッ、本当の事じゃないか」
アルフレッドはピーターをいつも以上にからかいDDDDDと笑って見せた。
アルフレッドのご機嫌斜めはピーターに理由があった。せっかくの休日にわざわざアーサーの家にやってきたアルフレッド、アーサーの驚く顔を見ようとバンッと玄関を開けたらソファーの近くにしゃがむアーサーが目に入ってきた。
驚く顔が見たかったのにアーサーは驚くどころか「シーッ」とジェスチャーしてきたのだ。
ドキリとしてリビングに足を踏み入れるとソファーにはピーターが眠っており、アーサーはそれを優しい眼差しで見つめていた。
一人きり…兄弟にも隣国にも嫌われ生きてきたアーサーは母性愛が人一倍強く、今ピーターに向けられている視線を昔は自分も受けていた。
今は会えば言い争いをするようになってしまったが…。
「おい二人ともいい加減にしろ」
アーサーが間に割って入った事により二人の他愛もない争いが納まる。
「アルフレッド、お前の方が歳上なんだから大人になれ」
「それからピーター、いい加減俺の家に花火を仕掛けるのやめろ、その後庭で遊んで疲れて昼寝するな」
アーサーはそれぞれに注意すると二人の頭をポンと叩いた。
「なっ!何するんだい君は!」
「………?」
「あ?なんだよアルフレッド君」
「俺を子供扱いしないでくれないかい」
アルフレッドは真っ赤になって怒るが、ピーターは「どうしたですか?」と帽子を被りながらアーサーと顔を見合わせた。
「だいたい君は世話焼きにも程があるよ!国と認めて無い相手にスコーンなんか振る舞おうとして」
「お前が全部食ったけどな」
「ピーターもピーターだ、その眉毛剃ってくれないかい?」
「シー君の眉毛をバカにするなですゆ!!」
「おいアル、お前もしかして嫉妬してんのか?」
アルフレッドのご機嫌斜めの理由が少しだけ解ったアーサーはニヨニヨしながらアルフレッドの頭を撫でた。身長差があるから少し背伸びをしなくてはならないが面白くて子供扱いをしてやりたくなる。
「き…君」
「誰だっけ…勝手に独立したのはよー」
「……今その話しは関係ないだろ」
アルフレッドは表情を曇らせアーサーの手を振り払った。
ピーターはつまらなくなったのか庭に出て虫を追いかけまわしている。従ってリビングには二人しか居ない。ピーターが居なくなったとたんアルフレッドはアーサーに抱きついた。
「なっ!なななななっ…何しやがる放せ」
「ほら、俺がその気になれば君なんか身動きとれなくなるんだぞ」
「わかった!解ったから放せ…ばかぁ…苦しい」
いつの間にか宙に浮いていた体を離されアーサーの足がストンと地に着く、だが足は着いたがアルフレッドに抱き締められたままだ。
「おいアル」
「黙って」
「………黙ってって?」
「世話を焼くのは俺だけにしてくれよ」
ボソリと耳元でそう囁くとアルフレッドはアーサーの肩に顔を埋めた。
END
尻切れとんぼ…