A Novel

□製作中
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「あ…っ!うあ!」


体がビクビク跳ねる


喉が引きつって変な声が出る


体の中に他人が入っている事実に俺は再度、とんでもない事をしているんだ…と思いながら自分を突く人に必死にしがみついた。



*仔犬の寝言



「あ…文七さん」


「………」


学校の帰り道、俺は前を歩く文七さんを見つけ思わず声をかけてしまった。

返事が帰ってこない事に俺は自分が執行部と敵対している立場の人間なんだと思いだし、しまった…と苦笑いした。


「す…すいません文七さん思わず…」


俺が声をかけたからか、歩く速度を遅くした文七さんに平謝りを繰り返しながら近寄っていくと、やっぱり文七さんは憮然とした表情をしていた。


「俺はヤローに声かけられて振り向くような男じゃねーぞ高柳」


「知ってますよ、つい出来心で…」


「ったくよ〜…兄貴は闘牛で弟は仔犬か?人にひょいひょい着いてくんじゃねーよ…」


吸っていたタバコを道路に押し付け呆れたように俺を見る、でもこの人は優しいから無理矢理俺を遠ざけたりはしない。

まるで昔の兄のように黙って側に居させてくれるんだ。


「文七さん…兄は大丈夫なんでしょうか」


「あ…何が、体が筋肉質過ぎて脳が大丈夫かって事か…それなら心配いらねーよお前の兄ちゃんの頭の中は高柳とマヤの事しか考えられねー頭だからな」


スラスラ言ってのけた文七さんの言葉には冗談の中にも真実が見え隠れしていた。

たまに感じる距離感はこの人が本音を当回しに言ってくるからなのかもしれない。


「…あなたが側に居れば大丈夫ですね」


「…………」


「…あ、すいません。用はそれだけなんで、僕帰ります」


この人と話していると兄の側にいるような気がしてしまう。ここ何年もまともに会話もしてくれない兄、その兄と何年も同じ道を歩んできた文七さん、俺の知らない兄さんを知っている文七さんが羨ましくて、黒いモノが体の中で蠢いたような気がした。

自分から声を掛けておいて何だが、早くこの場から立ちさらないと…この黒いモノが暴走して嫌な自分が出てきてしまう。



「…さようなら……」


兄の側に何で俺がいない

なんで文七さんが…

俺なら兄さんを助けられるのに

こんな戦いから解放してあげられるのに

この人には何もできないのに…


「高柳…」


「!!!」


顔を上げると文七さんが目の前に立っていた。






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