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□ワンコシリーズ!
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〜ワンコの掟〜


「これは一体どういう事なのよ!」
「似おとるで、アスナ」


爽やかな初夏の朝。
643号室はいつにもまして賑やか、その最たる原因はパジャマ姿のまま木乃香に詰め寄る明日菜。
下ろした髪の中には見慣れている筈の耳はなく、代わりに……


「どうして耳が犬耳になってるのよ!?」


そう、本来なら耳がある筈のその場所には黒い三角の垂れた犬耳が生えていたのだ。ちなみに毛足の長い尻尾も同じ色。
当然、明日菜はその場に居たルームメイトに真相を質そうとするが、返ってくるのは、


「やっぱりアスナは黒、それに垂れ耳が似合うわぁ」
「……聞いても無駄なような気がするけど……これってこのかがしたの?」
「うん」


何とも簡潔な返事だった。
これ以上問い詰めても意味がないと悟ったのか、明日菜は木乃香を睨みながら言う。


「早く元に戻してよ」
「んー……それは無理な相談やな」
「……なんで?」
「その魔法の効力、一日続くんや♪」


まさに寝耳に水。
明日菜は木乃香の言葉に呆然とし、そんな明日菜を見て木乃香がニヤリと笑う。
そして……


「あと、その魔法にはも一つオモロイ効果があってな……アスナ、オスワリ」
「へっ!?な、何よコレ!」


オスワリという言葉と共に床へと座り込む明日菜。
それは自分の意思とは関係無く勝手に体が動いていた。
そこへ追い討ちをかけるように満面の笑みを浮かべた木乃香が更に。


「おいで、アスナ」
「ちょっ……体が勝手にぃぃ」
「ええ子やな」


自分の近くへ来た明日菜の頭を撫でてから木乃香は説明をしだす。


「この魔法は外見だけやのうて、魔法をかけた術者の命令なら何でも聞かなあかんようになってるんやえ」
「変な所で極東一の力を使わないでよ!」


明日菜の叫びも虚しく、木乃香はどこから取り出したのか判らない大型犬用の首輪を片手にニッコリと言った。


「今日一日、アスナはウチのワンコや」
「マ、マジ……?」
「マジや」
「い、いやーーー!?」
「たーっぷり可愛がったるさかいな♪」


爽やかな朝にワンコの鳴き声が寮中に響いた瞬間だった。



FIN。。。
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